受容体と細胞内情報伝達系(1)|細胞の基本機能

看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。

 

[前回の内容]

シナプス伝達|生体機能の統御(2)

 

今回は、受容体と細胞内情報伝達系についての解説の1回目です。

 

片野由美
山形大学医学部名誉教授
松本 裕
東海大学医学部看護学科講師

 

Summary

  • 1. 情報伝達物質を結合する受容体には①Gタンパク質共役型、②イオンチャネル内蔵型、③チロシンキナーゼ連鎖型、④細胞内型の4つのタイプ(表1)が知られている。
  • 2. Gタンパク質共役型の代表的受容体にアドレナリン作動性β受容体がある。
  • 3. Gタンパク質共役型受容体に情報伝達物質が結合すると、Gタンパク質は、効果器タンパクへその情報を伝える変換器の役割を果たす。

 

〈目次〉

 

受容体と細胞内情報伝達系

化学伝達物質(情報伝達物質)を結合する受容体には、実にさまざまなものがある。近年の分子生物学的技術の進歩により、今やほとんどの受容体構造は明らかになっている。現在、次の4つのタイプの受容体が知られている。

 

①Gタンパク質共役型受容体

②イオンチャネル内蔵型受容体

③チロシンキナーゼ連鎖型受容体

④細胞内受容体(細胞質受容体、内受容体)

 

上記4つの受容体はその局在により、細胞膜に存在する受容体(細胞膜受容体と)、細胞内に存在する受容体(細胞質受容体、核内受容体)に分類される。細胞膜上、または細胞内にある受容体に情報伝達物質が結合すると、受容体タンパク質の構造が変化し、その変化が細胞内に伝えられ、それぞれ特有の反応を引き起こす。この受容体から細胞内反応(応答)にいたる過程を細胞内情報伝達系とよぶ(図1)。

 

図1細胞外情報の受容から細胞応答(機能変化)に至るまでの概略図

細胞外情報の受容から細胞応答(機能変化)に至るまでの流れ概略図

 

特定の受容体に結合する特定の伝達物質をリガンドという。リガンドが親水性の場合は上記①~③のように細胞膜上の受容体に結合する。リガンドが脂溶性(ステロイドホルモン甲状腺ホルモン等)の場合は④のように細胞膜を通過して細胞内の受容体と結合する。

 

代表的な受容体とその細胞内情報伝達系を表1に示す。

 

表1細胞内情報伝達系と代表的な受容体

細胞内情報伝達系と代表的な受容体

 

Gタンパク質共役型受容体とその細胞内情報伝達系

Gタンパク質共役型受容体の構造は、共通して一本鎖ペプチド(アミノ酸が結合したもの)が細胞膜を7回貫通している。Gタンパク質(GTP結合タンパク質:G protein、GTPはグアノシン三リン酸)が共役している受容体に情報伝達物質が結合すると、Gタンパク質は、効果器へその情報を伝える変換器(transducer)として働く。

 

Gタンパク質は、α、β、γの3つのサブユニットから構成されている。この3つのサブユニットのうちβとγは解離することはないが、αは解離する(GαとGβγとよぶ)。GαにはGDPやGTPを結合する部位がある。α、β、γサブユニットが会合しているとき、GαにはGDPが結合している。このとき、受容体は情報伝達物質を結合する準備状態にある。

 

すなわち、情報伝達物質は受容体に結合できる状態にある(親和性が高い状態にあるという、図2A)。

 

図2GTP結合タンパク質(Gタンパク質)を介する受容体から効果器への情報伝達

GTP結合タンパク質(Gタンパク質)を介する受容体から効果器への情報伝達

 

情報伝達物質が受容体に結合すると受容体の立体構造(conformation)が変化し、Gタンパク質が受容体から離れるとともにGDPが遊離し、代わって細胞内に高濃度で存在するGTPがGαに結合する。これをGTP-GDP交換反応という。

 

するとGTPと結合した Gαは(Gα-GTP)、Gβγと離れ、両者は別々に効果器に情報を伝える(図2B)。Gαは GTP分解活性(GTPase)をもっているので、GTP結合 Gαは GTPase によって、再びGDP結合Gαになる。

 

すると GαはGβγと再び会合して(Gαβγとなる)情報伝達物質結合準備状態に戻る。このようにして効果器が情報を受け取るが、この後の応答については後述する。

 

Gタンパク質の種類

Gβγの種類は実質的には1種とみなせるが、Gαには多くの種類がみつかっている。Gタンパク質の種類は、Gαの相違による。そのうち代表的なGタンパク質を表2に示す。

 

表2主なGタンパク質と共役する効果器

主なGタンパク質と共役する効果器

 

Gs:効果器、アデニル酸シクラーゼの活性を促進するもの(s は stimulatory の s)
Gi:効果器、アデニル酸シクラーゼの活性を抑制するもの(i は inhibitory の i)
Gq:効果器、ホスホリパーゼCを活性化するもの

 

アデニル酸シクラーゼ活性を促進するものをGs(s は stimulatory の s)、逆に抑制するものをGi(i は inhibitory の i)、ホスホリパーゼCを活性化するものをGqと名付けられた。

 

※編集部注※

当記事は、2016年2月28日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。

 

[次回]

受容体と細胞内情報伝達系(2)|細胞の基本機能

 

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版

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