手荒れ対策の基本はスタンダードプリコーションにある!

みなさんは、手指衛生に留意しなくてはならない看護師さんの仕事上、手荒れは仕方のないものだと諦めてはいませんか?

 

実は、荒れた手は細菌が付着しやすく、より細菌を媒介したり、伝播させてしまう危険性があります。そのため、手荒れを防ぎながら、手に優しい、適切なスタンダードプリコーションを徹底する必要があります。

 

そこで、今回は手に優しく正しいスタンダードプリコーションと、今日から実践できる手荒れ対策について紹介します。

 

 

〈目次〉

 

正しい手指衛生は手荒れも防ぐ

医療に関わる現場では、標準的な感染予防策であるスタンダードプリコーションが、看護の基本になります。しかし、看護師さんのなかには、必要なタイミングで手指衛生を行っていない方や、手袋をつけたままで複数の患者さんのケアをする方、手袋の上から速乾性擦式手指消毒剤を使用する方がいます。これは、スタンダードプリコーションが守られていないだけでなく、実は、手荒れの原因にもなっているのです。

 

ここで、WHO(世界保健機関)の推奨する手指衛生の方法()や目的を紹介します。

 

表 WHOが推奨する手指衛生の方法

WHOが推奨する手指衛生の方法

(WHO手指衛生ガイドライン 手指衛生の適応より引用改変)

 

このように、普段行っている日常的手洗いは細菌の除去を目的としていますが、衛生的手洗い、手術時手洗いでは殺菌が目的になり、より効果が高いことがわかります。

 

看護師さんの仕事道具でもある手は、さまざまなものに触れ、その都度あらゆる細菌が付着してしまいます。そのため、看護師さんから患者さんへ、そして患者さんから看護師さんへの菌の伝播を防ぐためには、一行為一手洗いが欠かせません。

 

衛生的手洗いは手に優しい

WHOが推奨する手指衛生は、目に見える汚れがない状態でも、患者さんやその周辺環境に接する前後に行うことです。そのため、スタンダードプリコーションを徹底するためには、洗面所などの設備がない状態でも簡単に手洗いができる衛生的手洗いが主になることでしょう。

 

たとえば、40人の患者さんが入院する病棟全体でアルボナース®(速乾性擦式手指消毒剤)の1Lボトルを使用したとします()。

 

図 アルボナース®(速乾性擦式手指消毒剤)

アルボナース(速乾性擦式手指消毒用アルコール製剤)

(写真提供:株式会社アルボース)

 

すると、正しいタイミングで正しい衛生的手洗いを行った場合、1日で1本消費することになります。しかし、手荒れが気になると、無意識のうちに衛生的手洗いを避けてしまいがちです。

 

●誤った手洗いを行っている看護師さん

たとえば、日常的手洗いにより付着した細菌を除去するためには、30秒以上の時間をかける必要があります。しかし、多くの看護師さんは、15秒程度しか手洗いを行っていないと、日本赤十字看護学会誌にも記載されています。

 

また、速乾性擦式手指消毒剤が乾くまで待てずに処置を始めたり、アルコールが速く乾くように、少量の手指消毒剤で手洗いを行っている方が見られます。

 

●手洗い方法に対する誤解

石鹸や界面活性剤を使用する日常的手洗いと、速乾性擦式手指消毒剤を使用する衛生的手洗いでは、アルコール成分を使用しない日常的手洗いの方が、手に優しいと思っていませんか? 実は、それは間違いです。

 

手荒れは、石鹸やお湯の使用により必要以上の脂質や水分が失われることが一番の原因になります。さらに、手洗い後、水分の拭き取りが不十分だと、手荒れを助長させてしまいます。一方で、速乾性擦式手指消毒剤は、日常的手洗いよりも消毒、殺菌効果が高く、さらに保湿作用のある成分が含まれているため手荒れを防いでくれます。

 

今日からできる手荒れ対策

 

看護師さんの手は、細菌を伝播させる媒介ではなく、患者さんに安心を与える温かい手であってほしいと、筆者は思います。そのため、仕事上、「手荒れは仕方がない」と諦めないでください。

 

ここで、勤務中にできる手荒れ対策と、自宅でできる手荒れ対策を紹介しますので、手荒れに悩む方は、実践してみてください。

 

●勤務中の手荒れ対策

(1)一行為後は必ず手袋を外して衛生的手洗いをする

手袋のつけっぱなしは、一行為一手洗いが行えていないだけでなく、蒸れによる皮膚炎を起こしやすい環境を作ってしまいます。

 

手袋は、外からの細菌をバリアする優れた医療用具だと思っていませんか? 手袋には、目に見えない小さな傷や穴が開いている不良品があったり、使用中に穴が開いてしまう可能性もあります。また、手袋を外す際に細菌が手に付着してしまうこともあります。

 

そのため、一つの行為が終わるたびに手袋を外し、衛生的手洗いを行う必要があります。これを習慣付けることで、細菌の媒介を防止したり、手の蒸れを防ぐことができます。

 

(2)皮膚保護クリームの使用

市販で購入できる皮膚保護クリームは、1日1回~数回使用することで、皮膚を保護し、適度な保湿をしてくれます。1日に何度も手指衛生を行ったとしても、皮膚保護クリームを塗っていれば、必要以上の脂質が奪われることを防いでくれます。しかし、皮膚保護クリームだけでは手荒れを完全に防ぐことは難しいのが現状です。そのため、ハンドクリームやローションを併用するとよいでしょう。

 

(3)勤務中はチューブタイプのハンドクリーム

患者さんのケアが落ち着いた際、手の皮膚が引っ張ったり、乾燥が気になった場合は、ハンドクリームを使用しましょう。特に、ポケットに忍ばせておくことのできるチューブタイプのものをオススメします。

 

チューブタイプのものは、汚れた手で直接クリームを触れずに使用できるため、最後まで衛生的に使用できます。また、ハンドクリームのなかには、香りつきのものがありますが、患者さんによって香りの好みが異なります。そのため、勤務中は無臭のワセリンなどを使用することをオススメします。

また、ハンドクリームと皮膚保護クリームを併用することで、手荒れ予防のさらなる期待もできます。

 

●自宅での手荒れ対策

(1)家事には手袋を活用

自宅に帰ってからの家事にも手荒れの原因があります。最も手荒れの原因になる家事は、やはり水仕事です。特に、洗剤は手の脂質や水分を奪います。そのため、水仕事の際は、手袋を活用しましょう。また、素手で行う場合は、熱めのお湯よりもぬるま湯の方が、脂質が奪われにくいです。

 

ほかにも、洗濯物などの繊維に触れる場合も、手の水分が奪われやすくなります。すでに手荒れがある場合は、繊維に引っかかり手荒れを悪化させることもあります。そのため、洗濯や掃除などの際にも手袋を活用するとよいでしょう。

 

(2)入浴後は好みの香りのハンドクリームでマッサージ

意外と見落としてしまうのが入浴時の石鹸です。しっかりと髪や身体を洗うと、それだけ手の脂質や水分を失ってしまいます。そのため、入浴後には、しっかりと保湿をしましょう。

 

プライベートタイムですから、保湿効果が高くリラックスできる香りのハンドクリームを使用して、血行を促すようにハンドマッサージをしましょう。血行を促すことにより、皮膚の新陳代謝を促し、ダメージを受けた手の皮膚を労わることが大切です。

 

(3)綿や絹の手袋で寝ている間のケア

手荒れにはシルクの手袋が効果的だと言われています。ハンドケア後は、どうしてもベタつきが気になります。綿や絹の手袋をつけることにより、ほかのところに触れてしまう心配がなくなります。さらに、手はカバーされていますが、手袋には通気性があるため、蒸れることなく、程よい保湿効果も期待できます。

また、手の冷えを防ぐことにより、血行促進の効果もあります。

 

*****

 

スタンダードプリコーションを徹底することは手荒れを防ぎ、手荒れを起こさないケアが、さらにスタンダードプリコーションの効果を高めるという、良いサイクルを生みます。みなさんも、今日から手に優しいスタンダードプリコーションとハンドケアをはじめてみましょう。

 

 

【ライター:こたつむし】

 

<引用文献・参考文献>
(1)世界保健機関 医療における手指衛生ガイドライン:要約(2016/11/14 アクセス)

(2)大日本住友製薬 手指衛生と消毒(2016/11/14 アクセス) 

(3)医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン(2016/11/14 アクセス)

(4)医療現場の感染性微生物の伝播予防のための基本要素(2016/11/14 アクセス)

(5)看護師の手洗い行動および認識とその「ずれ」に関する検討(2016/11/14 アクセス)

(6)手指衛生遵守率向上のためのポイント(2016/11/14 アクセス)

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