フェイ・グレン・アブデラの看護理論:21の看護問題
『新訂版 実践に生かす看護理論19 第2版』(サイオ出版)より転載。
今回はアブデラの看護理論の「21の看護問題」について解説します。
阿部芳江
関西福祉大学大学院看護学研究科/看護学部 元教授
- アブデラの理論の中心概念は「21の看護問題」である。
- 看護問題には、顕在的なものと潜在的なものがある。
- 看護は、問題解決過程を活用する。
- アブデラの「21の看護問題」は、看護を中心に記載されている。
- アブデラの「21の看護問題」は、看護教育システムにも大きく影響を及ぼし、多くの看護教育過程で使用された。
- アブデラの看護理論は、看護、教育、研究の分野で活用されてきた。
- アブデラの看護理論の限界は、それがあまりにも看護中心の志向性が強いことである。よりクライアント中心の志向性に改善するために、看護問題を多少修正すると、専門的看護の実践に、看護理論を効果的に活用しうるようになるとの指摘がある。
- アブデラは、自らの看護理論に対する考えの変化を、随時発表している。
アブデラの看護理論
アブデラは、看護は医学の支配下にあるものではなく、患者中心のものであるべきだと考えていた。
そのためにも、看護は専門職であり、自立していることが重要であるとし、科学的な知識体系が必要不可欠とした。
彼女が打ち出した「21の看護問題」は、現在の看護診断につながっているといわれている。
アブデラは看護について「看護は、個人と家族に対するサービスであり、社会に対するサービスになるのである」(1963)と述べている。
サービスの提供に必要な5つの基本要素として、①人間的技能と人間関係の習熟、②観察と報告、③徴候と症状の解釈、④看護問題の分析、⑤組織化をあげている。
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21の看護問題
アブデラに患者中心の看護に対する考えが芽生えはじめたのは、教育学博士号を取得した1955年であり、ちょうどアメリカ看護連盟の記録委員になった頃である。
その後、看護学生のための臨床資料の整備をはかるべくつくられた小委員会が、アブデラの研究グループになった。
この小委員会は、①看護の定義がはっきりしていない、②看護教育原理について新しい考え方が芽生えているものの実践にはまだ移されていない、③現行の看護教育課程は患者中心ではない、という3つの問題点を発見した。
アブデラは、患者の健康上のニードが看護上の問題であるとみなし、「21の看護問題」を発表した。
- 1個人の衛生と身体的安楽の保持
- 2適切な運動、休息、睡眠の調整
- 3事故、障害を防止し、病気の感染予防をとおして行う安全策の促進
- 4良好な身体機能の保持と、機能障害の防止と矯正
- 5身体各部細胞への酸素供給と保持と促進
- 6身体各部細胞への栄養供給の保持と促進
- 7排泄の円滑をはかる
- 8体液および電解質のバランスの保持と促進
- 9身体の病気に対する生理的反応(病理的、生理的、代償的)の理解
- 10身体の円滑な機構組織と機能の保持と促進
- 11身体の感覚的機能の保持と促進
- 12有形、無形の意思の表現、感情、反応の認識と理解
- 13臓器疾患と情緒の相互関連性の確認と理解
- 14有効的な、有言、無言の意思疎通の理解と努力
- 15建設的な人間関係の発展と努力
- 16個人の精神的目標達成を促す努力
- 17よき医療関係の創造と維持
- 18肉体的、情緒的、発展的ニードの多様性をもった個人としての自己を認めさせる
- 19肉体的、情緒的の制約内での最大可能な目標を理解させる
- 20疾病からくる諸問題の助けとして、社会資源の活用を行う
- 21病気の原因を起こす要素としての、社会問題を理解する
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アブデラとヘンダーソン
同時期に活躍した看護理論家であるヘンダーソンは、著書『Basic Principles of Nursing Care』(邦訳『看護の基本となるもの』)のなかで、14項目をあげている。通称「14のニード」とよばれるものである。
アブデラも、自著『患者中心の看護』のなかで21項目の「看護問題」をあげた。
ヘンダーソンとアブデラは、お互いに相手の看護理論に影響を受けたと述べている。両者は、影響し合うことによって看護理論をお互いに発展させたことになる。
ヘンダーソンとアブデラの看護理論における相違点は、ヘンダーソンの項目は患者の行動について書かれているが、アブデラの問題点は患者を中心としたサービスという視点からあげられており患者のニードを決定するときに用いることができ、さらに看護技術のリストも示している点にある。
ライト州立大学看護理論検討グループは、心理学者マズロー(A.H.Maslow)とヘンダーソン、そしてアブデラと、ニード階層の比較を行っている(表1)。
そのうえで、以下の点を指摘した(S.M.ファルコ、1998)。
- 1ヘンダーソンの項目内容は生理学的要素が中心であり、アブデラは心理的・社会的領域にも及んであげられている
- 2両者ともマズローのいう「自己実現のニード」を満たすものがないが、両者の看護要素が満たされることではじめて、患者は自己実現に向かうことになるだろう。
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看護問題と病状期の分類
「21の看護問題」は、「すべての患者にとって基本となるもの」と「維持的」「矯正期」「回復期」に分け、各期のケアごとにニードを分類した(表2)。
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看護問題と看護処置の分類
アブデラは、1953年から1958年までの5年間に、看護問題と看護処置の分類を3つの段階に分けて行った。
1第1段階
まず、30の総合病院をサンプルとし、患者から出された一般看護問題の分類と整理を行った。
さらにそれらを身体的、心理的、リハビリテーション的、診断時にみられる看護問題に分類した。
この作業でアブデラは、「看護師が看護問題を正確にとらえられなければ、看護問題やケアを細分化しても意味がない」(1963)ことがわかったと述べている。
2第2段階
次に、看護問題での「顕在/潜在」の規定を発展させるべく、主に看護問題を把握する方法を段階ごとにまとめた。
3第3段階
さらに、看護問題を精選・集約して21にまとめ、看護処置の分類作成に利用される看護技術リストを作成した。
これら1⃣2⃣3⃣の段階を踏んで、最終的には次のようになった。
Ⅰ グループ
すべての患者が必要とするもの。顕在的なもの・潜在的なものの両方がある。
- 1個人の衛生と身体的安楽の保持
- 2適切な運動、休息、睡眠の調整
- 3事故、障害を防止し、病気の感染予防をとおして行う安全策の促進
- 4良好な身体機能の保持と、機能障害の防止と矯正
Ⅱ グループ
生命維持に不可欠な生理的過程の正常と障害に関するもの。主に顕在的なものが多い。
- 5身体各部細胞への酸素供給と保持と促進
- 6身体各部細胞への栄養供給の保持と促進
- 7排泄の円滑をはかる
- 8体液および電解質のバランスの保持と促進
- 9身体の病気に対する生理的反応(病理的、生理的、代償的)の理解
- 10身体の円滑な機構組織と機能の保持と促進
- 11身体の感覚的機能の保持と促進
Ⅲ グループ
情緒的、対人的な要素が含まれる。大抵は顕在的なものである。
- 12有形、無形の意思の表現、感情、反応の認識と理解
- 13臓器疾患と情緒の相互関連性の確認と理解
- 14有効的な、有言、無言の意思疎通の理解と努力
- 15建設的な人間関係の発展と努力
- 16個人の精神的目標達成を促す努力
- 17よき医療関係の創造と維持
- 18肉体的、情緒的、発展的ニードの多様性をもった個人としての自己を認めさせる
Ⅳ グループ
社会学的、社会的問題が含まれる。顕在的なもの・潜在的なものの両方がある。
- 19肉体的、情緒的の制約内での最大可能な目標を理解させる
- 20疾病からくる諸問題の助けとして、社会資源の活用を行う
- 21病気の原因を起こす要素としての、社会問題を理解する
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顕在的な看護問題と潜在的な看護問題
アブデラは「21の看護問題」としてあげたもののうち、大抵は顕在的な看護問題であると考えた。
5〜11番目の看護問題以外は、潜在的な面もあるだろうとした(1963)。
顕在的な看護問題とは、患者や家族の情報から直接目にみえやすく、観察できるものである。
一方、潜在的な看護問題とは、患者や家族の情報のなかで隠れている状況の情報であり、患者とのコミュニケーション能力、信頼関係などのお互いの相互作用が深く関係してくる。
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問題解決過程
「問題解決」は、アブデラの著作の大きな柱だといえる。
アブデラは、「看護師が専門職として質の高い看護を提供するためには、問題解決能力が大切である」(1963)と述べている。
問題解決過程とは、顕在的あるいは潜在的な看護問題を明確化したうえで解釈・分析を行い、それらを解決するための適切な方策を選ぶ過程である。
看護過程は問題解決であり、看護を行うためには、看護問題を的確に把握することが重要である。
看護問題を的確に把握することではじめて、患者に適した看護を提供することが可能になるのである。
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アブデラの看護理論から得るもの
アブデラの看護理論には、親しみやすさがある。
ヘンダーソンやマズローの考えと比較するとアブデラが何をいいたかったのかがわかるように、ほかとの共通点が多い一方で、ほかでは触れられていないことにも気づかせてくれるからなのだろう。
患者のニードは多岐にわたる。それは人間が、身体的・感情的・社会的側面をもつ統合体だからである。
アブデラはこの3側面に着目し、身体的な領域だけでなく社会・心理的な領域も含め、バランスのとれた看護問題を提示した。
看護問題を正確に把握することで、私たちは偏りのない看護を患者に提供することができる。
「21の看護問題」は、いわば看護の指針なのである。
またアブデラは、看護問題には顕在的なものだけではなく、潜在的なものもあるという指摘を投げかけている。
私たちは臨床場面のなかで、目にみえないものの大切さについて頭ではよくわかっているものの、みえることだけで患者を判断してしまうことがある。
アブデラの看護理論は、患者の表情や言動の裏に潜む事柄に気をつけなければ、患者がもつ看護問題を正確に把握することができないことを教えてくれる。
さらに、看護は「問題解決過程」であるとも述べている。
問題解決能力は、適切なケア提供のために不可欠な要素であり、身につけていなければ看護の専門職とはいえない。
アブデラの看護理論には、看護問題や問題解決法などさまざまなエッセンスが詰まっている。これらを活用しながら、ダイナミックな看護の取り組みをめざしたいものである。
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看護理論のメタパラダイム(4つの概念)
1人間(患者/クライアント)
人間とは、身体的、感情的、社会学的ニードをもつ存在である。
患者がもつ看護問題は、患者または家族が直面する問題である。看護師のケアが、その解決を助けることができる。
看護問題には、顕在的なもの(身体的ニードなど)と、潜在的なもの(感情的、社会的ニードなど)がある。
アブデラは、1984年に「看護問題」から「患者/クライアントの結果」へのシフトを明らかにしている。
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2環境(社会)
アブデラは、この概念についてはあまり論じていない。
唯一、看護問題21項目のうち第17番目で触れている。
患者をとり巻く環境(社会)は、病院だけでなく、家庭や地域も含まれている。
具体的にいえば、病室、自宅、患者の居住地区である。患者は、環境とも相互作用を行う。看護師も環境の一部としている。
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3健康
アブデラは、健康の定義は明確にしていない。
『患者中心の看護』では、「健康とは病気ではない状態(illness)である」という考えだったが、その後、健康─不健康のなかで健康をとらえるべきであるという考えを示した。
患者中心の看護を行うためには、患者のニードへの全体論的なアプローチを検討する必要があること、また環境の理解が必要であると考えた。
『患者中心の看護』のなかでは、看護師よりも医師に、予防とリハビリテーションの知識が必要としていたが、その後に看護師が行う予防とリハビリテーションの重要性について述べている。
アブデラの看護理論では、健康な人のさらなる健康の増進ということについては述べられていない。
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4看護
看護は、個人と家族に対するサービスである。
看護ケアの実施に当たっては問題解決過程を活用する。看護とは健康─不健康を問わず、人々が自分自身の健康上のニードに対応できるように知識、技術、態度を生かして行うアートであり、サイエンスであると位置づけている。
看護問題は、顕在的なものと潜在的なものを見きわめることが大切である。
また、身体的、感情的、社会的ニード、看護師と患者間の人間関係、患者ケアに共通する要素に分類できる。
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看護理論に基づく事例展開
アブデラと看護過程
アブデラの看護理論を看護過程に応用する場合は、アセスメントの段階で患者の問題点を、顕在/潜在と適切に選択しなければならない。
看護問題を決定することで看護ケアの目標が立ち、看護計画は実践に移され、患者の看護問題は解決される。
そして、そのことによってニードが満たされていくのである。
アブデラは、愛情と、看護の知識・能力・技術を持ち合わせたうえで、患者にサービスができる看護師であることを望んでいる。
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膀胱がんの疑いで検査入院中のSさんの事例
Sさん、70歳、男性。銀行員だったが、現在は無職。妻は72歳で、長男夫婦、孫と一緒に暮らしている。
Sさんは、血尿があり、外来を受診した。検査の結果、膀胱がんの疑いがあり、外来で告知された後、精査のため入院中である。
検査には協力的で、わからないことは説明を求め、早く手術をして家に帰ろうと思っていることや、医師を信頼していることなどを看護師に語っている。
家族には、あまり病院には面会に来なくてよいと話しており、面会は少ない。
また、病室は4人部屋だが、ほかの患者と話すことも少ない。
Sさんには、現在とくに苦痛を伴う症状はないとのことだが、時折不安そうな表情をみせることがある。看護師は、Sさんがあまり入院生活に対しての希望を話さないこと、不安そうな表情の理由が何なのか気にかかっている。
Sさんの潜在的な看護問題発見のきっかけ
現在、Sさんに顕在的な看護問題は少ない。そこで看護師は、アブデラの「21の看護問題」をもとに再度アセスメントを行うことにした。
Sさんは、病名を告知されている。検査などでも積極的に説明を受ける姿勢がみられ、前向きな闘病生活を送っている。
また、医師に対する信頼も語っており、医師が「一緒にがんばりましょう」といってくれたことを頼もしく感じていることが、Sさんの話からも理解できた。
それでは、Sさんの不安そうな表情や、あまり話さない原因は何だろうか。
看護師は、その原因を探す必要があると考え、Sさんに面接をすることにした。
Sさんは、最初はあまり話さなかったが、静かな個室で看護師と話すうち、家にいる妻が数か月前から、物忘れや火の消し忘れなどの認知症の症状があり、入院するまでは自分が面倒をみていたが、いまはみられなくなったこと、長男夫婦は勤めに出ているため孫や長男夫婦が家に帰るまでは、妻が1人で家にいるので、実は心配でたまらないということがわかった。
病気を早く直して家に帰ろうということも、長男夫婦に面会に来なくてもいいといっていたことも、妻のことが心配で、長男夫婦には少しでも妻のそばにいてほしいというSさんの気持ちからだった。
長男夫婦は仕事に忙しく、以前Sさんが妻の様子を話したときには真剣に聞いてくれなかったとのことだった。
今回入院をして、自分のことでも迷惑をかけているのに、自分がみていたように妻をみてほしいということは言い出せなかったとのことであった。
妻の姿をみない分、心配が増強していることが理解できた。
Sさんの潜在的な看護問題の解決
看護師は、Sさんがこれまで語らなかった心配と不安の原因を明確にし、Sさんの了解を得て長男夫婦と面接をすることにした。
そして、現在のSさんの心配や不安を話すことにした。本来は、Sさんと長男夫婦が話すことがいちばんよいのだが、コミュニケーションがあまりとれていないことが理由で、Sさんは話せないまま、今日を迎えていたのである。
話し合いの結果、長男夫婦はSさんの気持ちを理解し、今後は母親の情報をSさんに知らせてくれることになった。
長男夫婦も、あまり話さない父親の気持ちがよくわからず、どのようにしてよいかわからなかったのである。
長男夫婦は、Sさんが話さないのは、がんの告知を受けたからであると思っていたことが判明した。
現在、Sさんの妻は病院を受診し、家に1人きりでいることが少なくなるよう、近くに嫁いでいる娘や妻の姉妹なども交代で見守ってくれていること、デイサービスなどの社会資源も活用しはじめ、認知症の症状が悪化していないとの情報が明らかになった。
長男夫婦は、Sさん自身の病気以外のことでSさんを心配させてはいけないと思い、話さなかったのである。
評価
Sさんは、入院後、意欲的に治療に専念する、とくに問題のみられない患者であった。
しかし、看護師はSさんの表情に目をとめ、看護理論を活用することによってアセスメントを行い、潜在的な看護問題を発見した。
このことから不安の解消がはかられ、Sさんは安心して入院生活が送れるようになったのである。
顕在的な看護問題だけではなく、潜在的な看護問題にも目を向けることで、Sさんの妻への心配が軽減することになり、Sさん自身の治療にも効果が期待できることとなった。
また、Sさんと長男夫婦がお互いを思い合っていることも、今回のコミュニケーションがうまくいかなかったことの原因ということが明らかになり、Sさんと長男夫婦との間で、心配や不安があるときには、話し合う機会をもつことが提案され、双方が納得したことは、今後の闘病生活において看護問題が生じたときの解決の糸口がみつかったことになる。
アセスメントを行う際には、看護理論の枠組みを使うことが有効であることを感じさせられたSさんの事例であった。
フェイ・グレン・アブデラ(Faye Glenn Abdellah)は、その著書『Patient-Centered Approaches to Nursing』(邦訳『患者中心の看護』)や『Better Patient Care Through Nursing Research』(『アブデラの看護研究』)などをとおして、わが国でもよく知られる理論家である。
アブデラといえば「21の看護問題」だが、彼女がこれを初めて発表したのは、1960年の『Patient-Centered Approaches to Nursing』である。
この看護理論は、わが国の看護界にも広く受け入れられ、看護師たちに大きな影響を与えてきた。
ヴァージニア・ヘンダーソン(Virginia Henderson)も、影響を受けた看護理論の1つにアブデラの看護理論をあげている。アブデラ自身も、ヘンダーソンの看護理論を展開させたといえる。
アブデラの看護理論の中核である「21の看護問題」は、人々の健康上のニードに関して患者が提示した看護問題から、問題解決法を用いて抽出・集約されたものである。
その後もアブデラは、看護についての考えをさらに発展させ、随時発表した。
アブデラが「患者中心の看護」の必要性を考えた背景には、1950年代のアメリカにおける病院体制がある。
当時の病院では、何よりも効率が重視され、患者はその方針の延長上で機能的に扱われていた。
看護師は、患者と過ごすことが必要と思っても時間がとれず、苦しい状況に置かれていた。そこで、この機能中心のジレンマの打開策として、PPC方式(progress patient care、患者のニードに基づいて患者をグループ化する試み)を採用したのである。
アブデラの論文や著作は100点を超え、アメリカ国内外で看護、教育、看護研究のすべてにわたって大きな貢献を果たした。
アブデラの歩んだ道
アブデラは、アメリカ、ニューヨークの生まれである。1942年、ニュージャージー州フィトキン・メモリアル病院看護学校を次席で卒業し、その後、コロンビア大学ティーチャーズ・カレッジで理学士号(1945年)、文学修士号(1947年)、教育学博士号(1955年)を取得した。
職歴としては、1943年から1945年にかけてコロンビア・プレビテリアン・メディカルセンターで看護師・師長を務め、1945年から1949年にはエール大学の看護学部で講師として教育に携わった。
さらに、コロンビア大学ティーチャーズ・カレッジで特別研究員、コロラド大学、ワシントン大学およびミネソタ大学で客員教授などの仕事に従事し、1949年からは合衆国公衆衛生局に勤務し、重要な役割を果たした。
1970年には、合衆国公衆衛生局の主任看護担当者に任命され、1982年に公衆衛生局副長官を兼務し、1989年に辞職した。
公衆衛生局勤務時代には、看護の領域はもちろん、在宅ケア、高齢化問題、長期ケア政策をはじめ、公衆衛生領域等、多方面で活躍し、足跡を残した。
アブデラの業績と活動
アブデラは、1955年にコロンビア大学のティーチャーズ・カレッジで教育博士号を取得した。
その後、『患者中心の看護』の執筆やPPCの研究業績などから、1967年にはケイス・ウエスタン・リザーブ大学から名誉博士号(看護研究のパイオニア、Nurse-Scholarとして)、1973年にはニュージャージー州のラトガーズ大学から名誉法学博士号、1978年にはオハイオ州のアクロン大学から名誉理学博士号(ヘルスサイエンスの発展および看護研究への貢献など、全国的に行った看護研究に貢献した人として)を贈られている。
わが国では、日本看護協会のコンサルタントという立場で、大学教育プログラムにおける看護教育と看護研究に関する開発を援助した。
アメリカでは、健康政策および公共政策分野で国内有数の研究者として、健康問題に関しては、世界的エキスパートとしての活動を行った。
アブデラの活動は多岐の領域にわたる非常にスケールが大きいものであり、看護科学者として大きな足跡を残す活動をした。
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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 実践に生かす看護理論19 第2版』 編著/城ヶ端初子/2018年11月刊行/ サイオ出版