頭ではわかるのに、その場に立つと何もできない。どうトレーニングしたら動けるようになる?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は急変対応のトレーニングについて解説します。
渕本雅昭
東邦大学医療センター大森病院 看護部/急性・重症患者看護専門看護師
頭ではわかるのに、その場に立つと何もできない。どうトレーニングしたら動けるようになる?
日ごろから、シミュレーションを活用したトレーニングを行うことが効果的です。
「頭ではわかっているのに体が動かない…」という状況は、急変対応の場面だけでみられるものではありません。
身近なところでは、自動車の運転もそうでしょう。本を読み、運転方法を学んでも、実際に乗ってみるとうまくいかない…。筆者も免許を取りたてのころは「習うより慣れろ」で、親の車を借りて、毎日乗っていたのを思い出します。
教科書の知識だけでは動けない
日常生活における「わかっているのに、体が動かない」という場面を、皆さんは、どのように克服したでしょうか?イメージトレーニングしたり、友達と一緒に練習したり、上手な人にコツを教えてもらったり、教科書や文献に書いてあること“プラス α”で学んできたことでしょう。
基礎看護技術においても同様です。教科書で理論や原則を学び、記述評価も受け、よい成績を修めたとしても、いざやってみると「ベッドメイキングがうまくいかない」「洗髪をすると耳に水が入っちゃう!」などといったことが起こります。むしろ、そのような失敗体験があるからこそ「うまくなりたい」という向上心が生じるのだと筆者は考えています。
頼れる先輩たちも、このような体験を重ね、さまざまな努力をしています。何度も苦手なところを反復したり、状況が変わった場合を想定して練習を重ねたりしているのです。
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シミュレーションは重要
「失敗」から学ぶことは多いとはいえ、生身の人間で急変を再現することはできませんし、急変場面を待ちかまえるわけにもいきません。そこで、最もよいトレーニングの1つとして挙げられるのがシミュレーションラーニングです。
シミュレーションラーニングには、タスクトレーニングからアルゴリズム・ベースド・トレーニング、シチュエーション・ベースド・ラーニングなどがありますが、「何を学習したいか」を決めて指導者と一緒に学ぶのが最大の特徴です。
失敗しても問題ありません。むしろ、その失敗を振り返ることで学びが深まります。「備えあれば憂いなし」で、日ごろからシミュレーションを活用したトレーニングをすることが、体が動かない場面を克服する第一歩かもしれません。
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[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社