“わかる”を“できる”にする方法
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は急変対応の“わかる”を“できる”にする方法について解説します。
道又元裕
Critical Care Research Institute(CCRI)代表
「手順は理解していて、誰かに質問されたら、正しく説明することもできる。しかし実際に急変の場面に遭遇すると動けなくなり、後悔ばかりが残る…」そんな思いを抱える方も、少なくないことでしょう。日ごろ急変があまり起こらない病棟で勤務している場合は、なおさら不安になると思います。
この「わかる」と「できる」の間には、非常に大きな違いがあります。
臨床で看護を展開するうえでは、「頭でわかっていることを、実践できる」ことが求められます。教科書やガイドラインをはじめ、さまざまな本を読み、知識をつけることはもちろん重要ですが、それだけでは、いざ、その場に立ったときに実践することは難しいのです。
「経験」から学ぶこと
1 急変対応は3段階
急変対応を考えるとき、看護師が感じる「なんとなく」といった違和感が重要な第一歩となります。違和感を感じ取れるようになるためには、必要な情報を収集する力と、情報を解釈する知識が必要です。
そして、感じ取った違和感をもとに臨床判断を進め、今後の展開を予測していきます。ここでは、看護過程を展開する力と、病態の知識が、必要となってくることでしょう。
今後の展開が予測できたら、あとは行動あるのみです。特に心肺蘇生は、決まった手順(アルゴリズム)に沿って実施できるようにトレーニングすればよいので、新人研修などで学んでいることが多いと思います。「いざ」というときに困らないよう、定期的に訓練しておく必要があります。
2 「違和感の察知」「臨床判断」には経験が不可欠
急変対応を「できる」ようになるためには、違和感を察知し、予測してかかわることが不可欠です。この力は、経験から学ぶしかありません。
病棟で起こった急変を振り返ることも、大切な経験の1つです。振り返りの際には、「よかったこと/悪かったことの両者を挙げる」「次に急変が起きた際、どうすればよりよい対応ができるか」に焦点を当てて、話し合うとよいでしょう。くれぐれも、不慣れなスタッフを一方的に責めるようなことはせず、建設的に話し合うことが重要です。
急変があまり起こらない病棟の場合は、他の病棟の事例や、市販のシナリオ集、事例が展開されている書籍などを活用し、「自分たちなら、どうするか」を話し合うとよいでしょう。シミュレーションラーニングは、高価なシミュレーター(患者モデル)がなくても、十分に実践できるのです(図1、図2)。
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[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社