気管挿管のため、かなり長く胸骨圧迫を中断。医師に「心肺蘇生が優先」と伝えてよい?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は胸骨圧迫の中断について、医師に意見を述べる際の対応を解説します。
小池伸享
前橋赤十字病院 看護部/救急看護認定看護師
気管挿管のため、かなり長く胸骨圧迫を中断。医師に「心肺蘇生が優先」と伝えてよい?
胸骨圧迫の中断は、最小限にしなければなりません。医師の立場を尊重しながら、誠実かつ率直に意見を述べましょう。
心肺蘇生を行うときに重要なことは、あらゆる医療者がチームとして治療に当たることです。医療において、効果的なチームワークは、患者安全に直接的な好影響を及ぼす1)といわれています。
チーム医療のカギは、注目されるポジションでもあるリーダーです。心肺蘇生などの救急初期診療において、リーダーは医師であるため、看護師は、メンバーシップの役割を担うことで、チーム医療へ貢献することになります。
意見をまとめ、方向づけることは、メンバーの立場からでも十分可能です。そのためには、自分の意見に固執せず、他者の意見を傾聴し、受け入れる姿勢が重要です。そうすることが、他のメンバーの刺激となり、チームを活性化させるのです。
「アサーティブ」が大切
チームをうまく機能させるためには、それぞれ専門性をもつメンバーが、同じ方向を向いて連携することが大切です。医療の質を向上させ、安全性を確保するためにも、コミュニケーションは、非常に重要なスキルです。特に、医療安全の面からみると、医療事故の7割に、コミュニケーションエラーが関係しているといわれています。
コミュニケーションは、①攻撃的、②非主張的、③アサーティブの3タイプに分けられますが、チームをうまく機能させるには、アサーティブなコミュニケーションが重要です。
チーム医療の役割として、リーダーとメンバーには、情報の共有化、そして、報告・連絡・相談の義務があります。潜在的に危険な状況が発生したときは、リーダーとメンバーが協議しなければなりません。
また、患者に望ましい結果をもたらすケアについて、メンバーがリーダーに提言しなければならないこともあります。そのようなとき、相手(医師)の立場を尊重しながら、誠実かつ率直に意見を述べ、相手の意見を傾聴しながら、建設的に意見を述べる必要があります。
しかし、あまりに対応が進まない場合には、別の医師へのコールが必要となります。
引用・参考文献
1) Baker DP,Gustafson S,Beaubien J,et al.Medical teamwork and patient safety:the evidence-based relation.Literature review.[2018.7.2アクセス]
2)日本蘇生協議会 監修:JRC蘇生ガイドライン2015.医学書院,東京,2016.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社