皮膚結核|抗酸菌症①

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は皮膚結核について解説します。

 

石井則久
国立療養所多磨全生園

 

 

抗酸菌症

抗酸菌(マイコバクテリウム属、Mycobacterium)とは、酸に抵抗性のある細菌のグループで、塗抹標本や病理標本を抗酸菌染色すると赤染される桿菌である。培養には小川培地や液体培地などを用いる。ほかの細菌とは感染様式、治療薬などが異なる。

抗酸菌は、結核菌、らい菌、非結核性抗酸菌(多菌種あり)に分類される(表1)。

 

表1 皮膚抗酸菌感染症

皮膚抗酸菌感染症

 

皮膚に病変がある場合は、接触感染の可能性が高いため、その点を考慮してケアを進める必要がある。とくに膿汁や滲出液、血液などは感染機会を増加させるので、患者教育や医療者の感染防御技術の向上が望まれる。

 

 

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皮膚結核とは

Minimum Essentials

1結核菌を証明できる真性結核と、証明できない結核疹に分類する。

2皮膚に結節や潰瘍をつくり慢性化する。自覚症状に乏しい。

3治療は複数の抗結核薬を6~9ヵ月程度内服する。

4治癒のスピードは緩徐である。

 

定義・概念

結核菌による皮膚感染症である。

 

原因・病態

皮膚結核の多くは、原発となる結核病巣を内臓に認め、その病巣から菌が皮膚に侵入して生じる。

 

一方、結核菌が皮膚に直接外部から接種されて生じることもある。これらを真性結核といい、皮膚病変部から結核菌を証明できる。

 

一方、皮膚病変から結核菌を証明できない結核菌に対する皮膚アレルギー反応を結核疹という。わが国における皮膚結核は年間約80例報告されている。適切な治療をすれば治癒する。

 

 

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診断へのアプローチ

臨床症状・臨床所見

真性結核および結核疹の皮膚病変は、紅斑、丘疹、結節、びらん、膿瘍など多彩である(図1)。内臓に原発結核病巣があり、難治性皮膚病変のある場合には診断は容易であるが、皮疹のみから診断することは困難である。

 

図1 皮膚腺病(皮膚真性結核)

頸部に発症することが多い。

皮膚腺病(皮膚真性結核)

 

検査

ツベルクリン反応を行う。真性結核では皮疹部の膿汁のスメア標本、生検で得た皮膚組織の抗酸菌染色などで結核菌を検出する。同時に培養(小川培地、液体培地など)や薬剤感受性試験も行う。

 

皮膚病変部のDNA診断は、迅速で高感度である。胸部単純X線などによる内臓病変の検索も必要である。

 

結核菌の検出が不可能な結核疹は、臨床・検査などから総合的に診断する。血液検査が皮膚結核の「感染」を判定できるかは、いまだ検討中である。

 

 

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治療ならびに看護の役割

治療

おもな治療法

臓器結核と同様に抗結核薬治療が基本であり、外来治療する。単剤治療は行わない。不定期な内服は耐性菌を生じやすいので、継続治療を指導する。

 

合併症とその治療法

局所では膿瘍・瘻孔の除去を行い、びらん面はポビドンヨードなどで消毒する。皮膚結核病変からの結核菌の散布はまれであり、ほかの内臓結核について検査をする。

 
治療経過・期間の見通しと予後

化学療法が主体で、6〜9ヵ月程度の治療になる。

 

看護の役割

治療における看護

・皮疹が改善しても、自己判断で内服中断しないよう服薬の確認をする。
・多剤耐性化を防ぎ、確実な初回完治の援助をする。

 

フォローアップ(退院指導、日常生活指導を含む)

・この疾患での入院は必要ない。
肺結核などの合併も危惧されるため、内臓結核が否定されるまでは換気に注意する。
・生活では過労を避け、バランスの良い食事と栄養をとる。
・結核と診断した場合にはただちに最寄りの保健所に届出し(医師)、患者に公費負担申請の説明をする。また、家族などの接触者健診を勧める。

 

 

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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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