計測・反射・評価
『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は新生児の計測・反射・評価について解説します。
藤本 薫
保健医療技術学部看護学科教授
身体計測
身体計測を行うことによって、胎内発育状態を評価する。
体重の計測
1原則として授乳前に全裸で測定する(図1)。
2慎重に体重計にのせ、新生児が飛び出しそうなときにすぐに手が届き、かつ、児や体重計に触れないように手でおおいながら測定する。
生理的体重減少
生下時体重の10%以内である。
身長の計測
1測定は2人で行う。
2新生児を仰臥位にして計測する。
31人は、新生児の耳孔と眼を結んだ線が垂直になるように、頭を固定板につけて固定する(図2)。
4もう1人は、片手で新生児の両膝を軽く押さえ、下肢を伸展させ、もう一方の手で足底に移動板をあてて計測する。
胸囲の計測
1新生児を仰臥位にして計測する。
2両肩甲骨直下と両乳頭上を結ぶ周囲を測定する。
3泣いていないときで、吸気と呼気の中間で測定する。
頭囲の計測
1新生児を仰臥位にして計測する。
2眉間と後頭結節を結ぶ周囲を測定する(図3)。
児頭の計測
新生児の発育状態、および分娩時の応形機能の程度、異常を知る指標とする(図4、図5、図6、表1)。
児頭計測の手順
1大横径、小横径、大泉門は、新生児を仰臥位にして計測する。
2前後径、小斜径、大斜径は、新生児を側臥位にして計測する。
3児頭計測器とノギスを用いて行う。
大泉門の観察
・大泉門の膨隆や開大は、水頭症、頭蓋内圧亢進、脳浮腫などの異常を疑う。
・大泉門の陥没は、脱水の可能性がある。1歳~1歳6か月くらいまでに閉鎖する。
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反射(原始反射)
目的・意義
中枢神経系は、脊髄、脳幹、間脳、大脳の順に発達する。在胎中の脳の中枢の成熟を示す原始反射は、出生直後からみられる反射行動である。反射の種類により消失時期が異なる。
観察方法
モロー反射は、中枢神経系の状態を表す重要な指標となる(図7)。
・音や振動など、さまざまな刺激によって誘発される。
・児は両上肢を開き、そのまま抱きつくような動作をする。
・上肢の動きが非対称な場合、腕神経叢麻痺(わんしんけいそうまひ)、鎖骨骨折などの存在が示唆(しさ)される。
・生後4か月頃までみられる。
②把握反射
・手掌把握反射:手掌や指にものが触れると、指を屈曲させて握るような動作をする。生後3か月頃までみられる。
・足底把握反射:足の指の付け根を圧迫すると、かかと全体が屈曲する。生後9~10か月頃までみられる。
③哺乳反射
・探索(たんさく)反射:乳首や指で口の周囲に触れると、触れた方向に顔を向ける。
・捕捉(ほそく)反射:口唇にものがあたったときに、くわえる動作をする。
・吸啜(きゅうてつ)反射:口腔内にものが入ると、これを吸う動作を繰り返す。
④バビンスキー反射
足底に触れると、足の指を開いて反り返る。
⑤原始歩行
新生児の腋窩を支え、起立させて足を床につけて前傾させると歩くような動作をする(図8)。
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出生直後の評価
目的・意義
アプガースコアは、出生直後の状態の評価であり、かつ主観的な評価である(表2)。出生時の児の状態を評価する手段として、広く用いられている。予後判定のものではないが、注意を要する新生児をスクリーニングする。
しかし、アプガースコアは主観的な評価のため、評価者によって点数が異なる場合がある。そのため、酸素や薬剤の使用の有無、蘇生(そせい)術の有無などを記述しておく。
観察方法
1心拍数、呼吸、筋緊張、反射、皮膚色について、0~2点の点数をつける。
2出生後1分、5分時に行い、5項目の合計点を出す。
アプガースコアの合計点による評価
8~10点:正常
5~7点:軽症仮死
3~4点:中等度仮死
0~2点:重症仮死
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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版