妊娠の確定診断
『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は妊娠の確定診断について解説します。
立岡弓子
滋賀医科大学医学部看護学科教授
妊娠の確定診断
妊娠の診断は、妊娠徴候の問診や基礎体温法と超音波などの臨床検査によって行われる。妊娠の徴候には、自覚症状と他覚症状がある。
問診
妊娠の自覚症状を問診する(表1、図1)。自覚症状として、月経が5日以上遅れていること、微熱が続いていたり体熱感があること、胸が張る感じがあったり、唾液がよく出るようになるといった身体の変調がみられることを確認する。
妊娠検査薬を購入し、自宅で検査をして陽性が確認されてから産科を受診する妊婦が多い。
超音波による方法
超音波による健診には経腟法と経腹法(ドップラー法)がある。
経腹法では妊娠5週より胎嚢(たいのう/gestational sac:GS)を確認できるが、経腟法では妊娠4週より確認ができ(表2、図2)、より解像度の高い鮮明な画像を得ることができる。そのため、妊娠初期では経腟法が用いられることが多い。
①経腟超音波断層法
胎嚢、胎芽(たいが)、胎児、胎児心拍動を検出することで妊娠を確定診断できる。
表2 経腟超音波断層法の所見
図2 経腟超音波断層法による胎嚢(GS)と頭殿長(CRL)の測定
②超音波ドップラー法(経腹法)
妊娠 10 週から胎児心音が聴取可能である(図3)。
妊娠反応(比色法と判定時間)
早朝尿(起床時第一尿)には、一般に高濃度のhCG(human chorionic gonadotropin:ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を含んでおり、早朝尿(起床時第一尿)が妊娠反応には適している。現在の妊娠反応検査キットでは免疫クロマトグラフィーの原理により、hCG 抗原に1次抗体として抗hCG マウスモノクロナール抗体結合赤色ラテックス粒子を結合させ、これに抗hCG ヤギポリクロナール抗体で抗体の固定化部位に赤色バンドが出現する仕組みとなっている(図4、図5)。判定時間は約3分である。
妊娠中に産生されるホルモン。胎盤をつくる絨毛組織の絨毛細胞から分泌される。
妊娠反応は妊娠3週後半から陽性を示し、妊娠4週0日ではhCG値は200〜400IU/mLで全例陽性となる。妊娠5週0日ではhCG値は2000〜4000IU/mLと上昇する。
妊娠反応陽性は妊娠または絨毛(じゅうもう)性疾患、治療に使用したhCG で陽性となる。妊娠反応検査キットの例としてクイックビューワンステップhCG test(アルフレッサファーマ製)を示す(図6)。
図6 妊娠反応検査キット(クイックビューワンステップhCG test)
内診
内診により子宮の発達状況や異常があるかどうかを確認する。妊娠による子宮の変化は、妊娠8週頃から観察される。
①ピスカチェック徴候
妊卵の着床部位がほかの部位よりも柔軟であり、ふくらんで触知される。
②ヘガール徴候
双合診による子宮所見として、子宮頚部は硬く、子宮体部は柔軟という特徴がみられる(図7、図8)。
memo:双合診
腟の中に指を入れ、もう片方の手で外側から子宮を押し、子宮や卵巣の状態を触知する方法。
目次に戻る
本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版