大動脈内バルーンパンピング(IABP)《知っておきたい治療法①》
『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は大動脈内バルーンパンピング(IABP)について解説します。
山川美穂
新東京病院看護部
〈目次〉
大動脈内バルーンパンピング(IABP)はどんな治療?
大動脈内バルーンパンピング(intra-aortic balloon pumping;IABP)は、バルーンのついたカテーテルを胸部下行大動脈内に留置し、心臓の拍動に合わせて、バルーンの収縮(デフレーション)と拡張(インフレーション)を繰り返すことで心臓を補助する圧補助循環装置です(表1)。
心臓の拡張期にバルーンを拡張させることにより、冠動脈への血流が増加し、心筋への酸素供給量を増加させます(図1)。また、バルーンを収縮させることで、急激に大動脈圧が低下し、後負荷が減少します。心拍出量の10~15%程度の補助効果があります。
IABP挿入中の看護のポイント
IABP挿入中は安静が重要なため、患者さんの理解と協力が必要です。苦痛やストレスに対する看護や十分な説明が重要です(表3)。
▷同一体位による苦痛や腰痛が予測されるため、腰部マッサージや除圧、鎮痛薬の投与など、苦痛を軽減する看護を提供します。
▷安静を説明する際のポイントとして、「○○はできません」という制限ばかりでなく、「~ができます」など可能なことを明確に伝えると、精神的苦痛やストレスを軽減する効果が得られるようです。
体位変換や清潔ケアなど、身体を動かすケアの前後では、カテーテルの位置にずれが生じないよう、モニター類を確認しながら人員を確保して安全に実施します。体位変換時は、背部から下肢がまっすぐになるようにクッションなどを用いて調整をします。
IABPの効果を最大限に引き出すには、バルーンの収縮・拡張のタイミングが重要となります。心臓の拍動のタイミングに合わせる方法(トリガー)には、心電図と大動脈圧のどちらかを使用します。タイミングがずれてしまうと効果が下がるだけでなく、逆に後負荷が増大するなどの弊害が生じます。心電図でタイミングを合わせているとき(心電図トリガー)は、心電図電極が剥がれてしまうとIABPは停止するため、心電図電極を補強し剥がれないように固定します。
文献
- 1)辻本雄大,松葉晃平:イラストで理解! IABPの仕組み.高田弥寿子企画編集:ICU・CCUのME機器を理解する!.循環器ナーシング 2015;5(6):7.
- 2)正井崇史著:メディカのセミナー濃縮ライブシリーズ Dr.正井のなぜなに?がガツンとわかる補助循環.メディカ出版,大阪,2015.
- 3)道又元裕総監修,露木菜緒監修・解説:ICU3年目ナースのノート 改訂増強版.日総研出版,愛知,2017.
- 4)平野充:IV.循環サポート機器 IABP~重装備でとっつきにくいIABP,しくみを整理してケアも一歩前進~.急性・重症患者ケア 2013;2(3):646-654.
- 5)武澤真:IABP装着中のケア~苦手だった私が…「得意」になる自分に変わるために!~.山中源治,小泉雅子編:徹底ガイド 心臓血管外科 術後管理・ケア(ハンディ版).総合医学社,東京,2016:435-450.
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社