IABPのウイニング(離脱)|大動脈内バルーンパンピング(IABP)《知っておきたい治療法①》
『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回はIABPのウイニング(離脱)について解説します。
山川美穂
新東京病院看護部
〈目次〉
IABPのウィニング(離脱)
心拍数とバルーンの拡張と収縮の割合をアシスト比といいます。心拍数1回に対しバルーンの拡張と収縮が1回ならアシスト比1:1、心拍数2回に対しバルーンの拡張と収縮が1回ならアシスト比1:2です。
循環動態が維持できるようになり、離脱の目途がたったら、徐々にバルーンの拡張と収縮の回数を減らしていきます。
大動脈内バルーンパンピング(IABP)のウィニング(離脱)中に、胸痛や心電図変化が出現したときは、心筋虚血を疑うため、ウィニングを中止し、アシスト比を1:1に戻し、対応します。
アシスト比が少なくなれば、バルーンが動かない時間も増えるため、血栓形成のリスクが高くなります。
IABP抜去時の看護のポイント
IABPの抜去時は医師によって用手圧迫止血を行います。用手圧迫中は、下肢の血流障害を起こす可能性があるため、下肢虚血の合併症に基づく観察が必要です(表1)。
補助がなくなったことで、血圧低下や胸部症状が出現する可能性があるため、抜去後も注意深く観察を続ける必要があります。また、圧迫による疼痛で迷走神経反射が出現することがあります。症状として、あくび、眠気、めまい、心拍数低下、血圧低下などがあります。
文献
- 1)辻本雄大,松葉晃平:イラストで理解! IABPの仕組み.高田弥寿子企画編集:ICU・CCUのME機器を理解する!.循環器ナーシング 2015;5(6):7.
- 2)正井崇史著:メディカのセミナー濃縮ライブシリーズ Dr.正井のなぜなに?がガツンとわかる補助循環.メディカ出版,大阪,2015.
- 3)道又元裕総監修,露木菜緒監修・解説:ICU3年目ナースのノート 改訂増強版.日総研出版,愛知,2017.
- 4)平野充:IV.循環サポート機器 IABP~重装備でとっつきにくいIABP,しくみを整理してケアも一歩前進~.急性・重症患者ケア 2013;2(3):646-654.
- 5)武澤真:IABP装着中のケア~苦手だった私が…「得意」になる自分に変わるために!~.山中源治,小泉雅子編:徹底ガイド 心臓血管外科 術後管理・ケア(ハンディ版).総合医学社,東京,2016:435-450.
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社