深部静脈血栓症(DVT)
『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は深部静脈血栓症(DVT)について解説します。
〈目次〉
深部静脈血栓症(DVT)はどんな疾患?
深部静脈血栓症(deep venous thrombosis;DVT)は、深部静脈の中の血液が凝固して血栓ができ、深部静脈の内腔を塞いでしまった状態です(図1)。
血栓形成の要因には、長期臥床などによる血流停滞、手術や外傷などによる血管内障害、脱水などによる血液凝固能の亢進があります。
血栓は、9割以上が足の静脈内にできます。血栓が血液の流れにのって右心房、右心室を経由して肺静脈まで運ばれて肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism;PTE)の原因となります。DVTとPTEの2つを合わせて静脈血栓塞栓症(VTE)と呼びます。
患者さんはどんな状態?
多くの場合、片側のふくらはぎに症状が起こります(図2)。また、長時間同じ姿勢で座っていたり、寝たきりで血液の流れが悪くなることでも起こります。
どんな検査をして診断する?
血栓の状態は、静脈エコー・造影CT検査によって観察します(表1)。
血液検査としてDダイマーを測定します。
どんな治療を行う?
肺血栓塞栓症を引き起こす危険性があるため、一刻も早く治療を開始します(表2)。
第一に肺血栓塞栓症の予防として、ヘパリンによる抗凝固療法を行います。抗凝固療法ができない場合などは、下大静脈フィルターを留置します。
★1 血栓塞栓除去術
看護師は何に注意する?
急激な腫脹と疼痛が出現するため、疼痛コントロールが重要になります(表3)。
治療後の一定期間はベッド上安静が続きます。臥床状態が続くことによってストレスがたまります。ストレスはせん妄にもつながるため軽減に努めましょう。
抗凝固療法を続けなければいけないため、出血傾向となります。日常生活でもけがに気をつけて生活する必要があります(表4-3)。
肺血栓塞栓症が発症しやすいタイミングは、安静状態から体を起こしたときです。このことを念頭におき、初回歩行時には必ず付き添い、清拭・体位変換・排泄・リハビリテーション・処置・検査・食事などを行う際には注意しましょう(肺血栓塞栓症の看護)
深部静脈血栓症の看護の経過
深部静脈血栓症の看護を経過ごとにみていきましょう(表4-1、表4-2、表4-3)。
看護の経過の一覧表はこちら。
表4-2深部静脈血栓症の看護の経過 入院直後・急性期
表4-3深部静脈血栓症の看護の経過 一般病棟・自宅療養(外来)に向けて
文献
- 1)リンパ管疾患情報ステーション:リンパ管とは?.(2019.09.01アクセス)
- 2)大八木秀和:まるごと図解 循環器疾患.照林社,東京,2013.
- 3)黒澤博身総監修:全部見える 循環器疾患.成美堂出版,東京,2012.
- 4)医療情報科学研究所編:病気がみえる vol.2循環器 第4版.メディックメディア,東京,2017.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 循環器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社