皮膚が感じる感覚には何がある?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は皮膚が感じる感覚について解説します。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
皮膚が感じる感覚には何がある?
皮膚で感じる感覚には、触覚、圧覚、痛覚、冷覚、温覚などがあります。これらの感覚を受容するのが、それぞれ、触点、圧点、痛点、冷点、温点です。
最も数が多いのが触点で、以下、痛点、冷点、圧点、温点の順で少なくなります。なぜ触点や痛点が多いのかというと、これらの感覚が身体の危険に深くかかわっており、感知して即座に反応する必要があるからと考えられています。
触覚は物が皮膚に触れたときに生じる感覚です。触覚を受容する触点が最も多く分布しているのは口唇で、反対に最も少ないのは殿部です。痛覚は針のような鋭いものが刺さったときに痛いと感じる感覚です。痛みの刺激が強い場合は、無意識に加害物を払いのけたり避けたりする反応が生じますが、これは脊髄反射によります(「熱いものに触れると思わず手を引っ込めるのはなぜ?」参照)。圧覚は、皮膚に伝わる圧力の変化を感じ取るための感覚です。私たちが手のひらに乗せた物の重さを感じることができるのは、圧覚のおかげです。
冷覚は冷たい物や空気に触れたときに冷たいと感じる感覚、温覚は熱い物や空気に触れたときに熱いと感じる感覚です。冷覚や温覚が最もよく働くのは、16°C~40°Cの温度帯です。この温度帯よりも温度が低くなったり高くなったりすると、痛覚のほうが反応して痛いと感じます。これは、痛覚が脊髄反射に直結しているためです。冷たすぎる物や熱すぎる物に触れたとき、凍傷や熱傷から身を守るための巧妙な仕組みといえるでしょう。
MEMO1凍傷
過度の寒冷のために血行が阻害され、皮膚が損傷した状態。損傷の程度によって表在凍傷(I度〔表皮〕の障害、II度〔真皮〕の障害)と深部凍傷(III度〔脂肪・筋肉の壊死〕、IV度〔骨・軟骨の壊死〕)に分けられます。深部凍傷になると皮膚の下の組織が壊死を起こします。
MEMO2熱傷
高熱の物質や炎で皮膚や粘膜が損傷された状態。損傷の深さにより、I度(表皮熱傷)、II度(真皮熱傷)、III度(皮下熱傷)に分けられます。損傷した面積が全体表面積の1/5(成人)あるいは1/10(小児)を超えると細胞外液が失われ、生命に危険が及びます。
※編集部注※
当記事は、2020年4月7日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック 第2版』 (監修)山田幸宏/2023年8月刊行/ サイオ出版