ストーマ粘膜は石けんで洗浄してもいいの?
『ストーマ術後ケア まるっとわかるQ&A95』より転載。
今回は、ストーマ粘膜の洗浄について解説します。
ストーマ粘膜は石けんで洗浄してもいいの?
術直後のストーマ粘膜は浮腫が強く,少しの刺激で損傷を受けやすい状態です.また,ストーマ粘膜皮膚接合部においては48時間の経過をもって炎症期が終了します.
この期間は創を安静に保つことが治癒を促進させるので,機械的な刺激を加えるのは避けましょう.
解説
コロストミーの場合,術後腸管麻痺がとれて排便がみられるまで数日かかりますが,腸粘液の排出はみられます.また,イレオストミーの場合では,術後ただちに消化酵素を含んだ腸液の排出がみられます.どちらもストーマ粘膜皮膚接合部やストーマ近接部の皮膚を汚染させます.
創傷治癒にはこれらの汚染物を除去する必要がありますが,一般的にストーマ粘膜皮膚接合部は感染のない創を縫合している(一次治癒)ため,受傷直後から放出された治癒に必要な各種細胞のはたらきにより,48時間後には治癒されていると考えられています.しかし,患者自身に創傷治癒遅延になる要因がある場合は,もう少し時間がかかることもあるでしょう.
この48時間の間,創面を安静に保持することでストーマ粘膜皮膚接合部の離開を防ぐことができますので,汚れを落とすために石けんを用いて機械的に洗うのではなく,水道水または生理食塩水を用いてやさしく汚染物をかけ流す程度にとどめるようにしましょう.
知っておこう!一次治癒とは?
手術創はメスなどの鋭利な刃物によって作られ,その断面は平坦で組織の破壊もほとんどみられません.また,メスにより血管も鋭く切断され出血がみられます.このような創を縫合し治癒に向かわせることを一次治癒と呼びます.
血管が切断され出血がみられる際に血小板が止血のため凝集します.その際,血小板からは創傷治癒を促進させる各種成長因子が放出されます.この期間を「炎症期」と呼び,受傷直後から2~3日は持続します.この炎症期を異物・感染・創の乾燥などから保護し,炎症期を延ばさないことが,治癒へとつながります.
[Profile]
石濵 慶子 いしはま・けいこ
星ヶ丘厚生年金病院看護局看護科長/皮膚・排泄ケア認定看護師
*所属は掲載時のものです。
本記事は株式会社メディカ出版の提供により掲載しています。
[出典]『ストーマ術後ケア まるっとわかるQ&A95 病棟での困りごとがこれで解決!』(編著)菅井亜由美/2013年4月刊行