ベンゾジアゼピン系薬剤がせん妄を起こしやすいしくみ
『せん妄のスタンダードケア Q&A100』より転載。
今回は、ベンゾジアゼピン系薬剤について解説します。
ベンゾジアゼピン系薬剤がせん妄を起こしやすいしくみ
ベンゾジアゼピン系薬剤によるせん妄の発症として,以下のことが考えられます.
① せん妄発症のメカニズムの1 つに睡眠覚醒リズムの乱れ,睡眠の質の低下(深い睡眠相の短縮と浅い眠りの増加,途中覚醒増加)があります.
② 高齢者では,健康でも生理的に睡眠の質の低下状態にあります(認知症では,さらに睡眠リズムが崩れています).
③ ベンゾジアゼピン系薬剤を用いると,深い眠りが短縮し,途中覚醒が増えます(精神神経学雑誌,1982).
よって,高齢者+浅眠断眠が生じやすい医療環境にベンゾジアゼピン系薬剤が加わることで,せん妄発症のトライアングルができてしまい,せん妄惹起にいたりやすいのです.
付け加えて,ベンゾジアゼピン系による不十分な鎮静は,むしろ前頭葉機能の脱抑制を引き起こし(ちょうどほろ酔い加減の酔漢の行動を思い浮かべてください),かえって原始的,短絡的な行動を引き起こすことがあります.
[Profile]
渡邉 博幸 (わたなべ ひろゆき)
千葉大学社会精神保健教育研究センター
*所属は掲載時のものです。
本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典]『“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100』(編集)酒井郁子、渡邉博幸/2014年3月刊行