横行結腸ストーマの特徴と観察ポイントは?
『ストーマ術後ケア まるっとわかるQ&A95』より転載。
今回は、横行結腸ストーマの特徴と観察ポイントについて解説します。
横行結腸ストーマの特徴と観察ポイントは?
横行結腸ストーマは直腸がんの低位前方切除術のカバーリングストーマ(吻合部の縫合不全予防のためのストーマ)として,造設されることがあります.上腹部に造設となることが多く,排泄物は泥状から軟便となります.
解説
横行結腸は後腹膜に固定されておらず,結腸間膜のみで固定されています.そのため可動性が大きく,腹腔外に引き出しやすいという点からストーマ造設に利用しやすいといえます.
横行結腸ストーマ(図1)は上腹部もしくは臍の高さあたりに造設されます(図2).
肋骨との距離が近くなるとストーマ装具の装着が難しくなることがあります(図3)ので,術前のストーマサイトマーキング時には肋骨との位置関係に注意しましょう.
また,ウエストラインよりも頭側のストーマとなることが多いので,患者と一緒に社会復帰時の服装についても,ストーマサイトマーキングの段階から相談しておきましょう.
横行結腸のストーマでは,泥状便から軟便が排泄されますので,下行結腸やS状結腸ストーマに比べると漏れや皮膚トラブルが発生しやすいといえます.ストーマ装具交換時には面板の溶解・膨潤と合わせて皮膚状態を観察します.
知っておこう!ストーマのほかに機能障害をもつBさん
結腸がんでストーマ造設術を受けたBさんは,体調が悪い時でもストーマケアは奥さんに頼ることなく,すべて自分で行ってきました.
ストーマを造設してから数年後,Bさんは脳梗塞で倒れ左半身に麻痺が残りました.幸い意識はしっかりされていて,私がストーマケアのお手伝いに病室に伺うと,「自分でやるよ」と言って麻痺のない右手で一生懸命にストーマ装具をカットしようとされます.この時点では,左手が麻痺して動かないことはまだ理解されていないようでした.
「入院中くらいは,お手伝いさせてくださいよ~」と声をかけて,装具をBさんの目の前で保持するお手伝いをして,カットはBさんにやっていただきました.いつもよりもギザギザのカットとなった装具を見ながら,「ほらね~,上手くできたでしょ」と得意げな表情を見せてくれたBさん.Bさんにとって,ストーマケアは完全に生活の一部になっているのだな,と頼もしく思う場面でした.
Bさんに限らず,排泄以外にも機能障害をもつオストメイトはたくさんいます.また,ストーマを保有したのち何らかの機能障害をもつことになる場合も少なくありません.
どうすればその機能障害を補ったストーマケアが可能なのか?どこを手助けすれば,セルフケアが可能なのか? を考えていくことも,看護のひとつかもしれません.
[引用・参考文献]
[Profile]
保刈 伸代 ほかり・のぶよ
東邦大学医療センター大森病院看護部/皮膚・排泄ケア認定看護師
*所属は掲載時のものです。
本記事は株式会社メディカ出版の提供により掲載しています。
[出典]『ストーマ術後ケア まるっとわかるQ&A95 病棟での困りごとがこれで解決!』(編著)菅井亜由美/2013年4月刊行