面板の皮膚保護剤にはどのような役割があるの?|ストーマ装具
『ストーマ術後ケア まるっとわかるQ&A95』より転載。
今回は、ストーマの面板の皮膚保護剤について解説します。
面板の皮膚保護剤にはどのような役割があるの?
面板の粘着面には皮膚保護剤が使用されています(全面粘着テープ式の面板を除く).
皮膚保護剤とは,「排泄・分泌物の皮膚接触を防止し皮膚を生理的状態に保つ作用がある吸水性粘着剤」と定義されています2).つまり,「ただの粘着剤」ではなく,吸水作用やpH緩衝作用,静菌作用,保温作用を有しています.
このため面板を一定期間貼付したままであっても,皮膚障害を起こさず過ごすことができるのです.
解説
皮膚保護剤は,親水性ポリマーと疎水性ポリマーで構成されており,ポリマーの成分や配合の割合によって,皮膚保護剤の特徴が変わります.
親水性ポリマー
水に対してよく溶解・吸収・膨潤などの相互作用をする高分子物質.カラヤガム,ペクチン,CMC(カルボキシメチルセルロース),コットンファイバーなどの種類がある.
疎水性ポリマー
水に対して溶解・吸収・膨潤などの相互作用をしない高分子物質.PIB(ポリイソブチレン),SIS(スチレンイソプレンスチレン),EVA(エチレン・酢酸ビニル・コポリマー),マイクロファイバーなどの種類がある.
親水性ポリマーはおもに水分吸収や緩衝作用,静菌作用といった役割を担います.一方,疎水性ポリマーは,粘着作用や形状保持,耐久性という役割を担います.
ただし,皮膚保護剤には耐久性があります.この耐久性を超えて長期間使用すると皮膚保護機能はなくなり,「ただの粘着剤」になってしまいますので,適切な時期に交換することが原則です.
皮膚保護剤の形状は以下の4種類に分けられ,それぞれに特徴があります(表1,図1).
表1皮膚保護剤の剤型と特徴・使用方法(文献3を参考に作成)
図1いろいろな皮膚保護剤(写真提供:アルケア,コロプラスト,コンバテック ジャパン,ダンサック,ホリスター)
pH緩衝作用
アルカリ性や強酸性などの化学的刺激を中和して,皮膚表面を弱酸性に近づける作用です.
静菌作用
皮膚表面を弱酸性にすることで細菌が繁殖しにくいpH環境にする作用です.
[引用・参考文献]
- 1)日本ストーマリハビリテーション学会編.ストーマリハビリテーション学用語集.第2 版.金原出版,2003,154─5.
- 2)前掲書 1),90.
- 3)日本ET/WOC協会編.ストーマケア エキスパートの実践と技術.照林社,2007,23.
- 4)関西ストーマ講習会実行委員会・関西STOMA研究会主催.関西ストーマ講習会テキスト.平成17年8 月制作・平成24年改訂.
- 5)ストーマリハビリテーション講習会実行委員会編.ストーマリハビリテーション 実践と理論.金原出版,2006.
- 6)穴澤貞夫編.実践ストーマ・ケア.へるす出版,2003,(臨牀看護セレクション,10).
- 7)溝上祐子監.入門 尿路ストーマケア.ウロ・ナーシング冬季増刊.メディカ出版,2004.
[Profile]
小林 直美 こばやし・なおみ
パナソニック健康保険組合松下記念病院看護部主任/皮膚・排泄ケア認定看護師
*所属は掲載時のものです。
本記事は株式会社メディカ出版の提供により掲載しています。
[出典]『ストーマ術後ケア まるっとわかるQ&A95 病棟での困りごとがこれで解決!』(編著)菅井亜由美/2013年4月刊行