片麻痺がある患者は健側を下にした体位にするのはなぜ?|食事援助
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『看護技術のなぜ?ガイドブック』より転載。
今回は片麻痺がある患者の食事の際の体位に関するQ&Aです。
大川美千代
群馬県立県民健康科学大学看護学部准教授
片麻痺がある患者は健側を下にした体位にするのはなぜ?
健側を下にした側臥位を取ることで、重力によって食べ物が健側の咽頭に集まり、嚥下しやすくなるためです。誤嚥の予防にもつながります。
安静時の顔貌(患側での鼻唇溝の消失、口角の下降、眼瞼の開大など)、舌を出した時の傾き(舌が患側に傾いて突出)、前口蓋弓を刺激した時の軟口蓋の動き方(健側のみ上がる)などを観察することによって、健側・患側を確認する必要があります。
介助をする場合は、健側のほうから行います。
memoサイレント・アスピレーション
誤嚥をすると、むせる、咳が出る、声が湿声になって痰が増える、発熱するなどの徴候が現れます。しかし、誤嚥をしても、徴候がほとんど現れないこともあります。これをサイレント・アスピレーションといいます。
採血をしても炎症反応が低い値しか示さない、肺に感染を起こしていても微熱しか出ないという場合もあります。それでも誤嚥が疑われる場合は、肺のレントゲン、聴診、食道造影などを行います。
嚥下のメカニズム
嚥下は、舌、軟口蓋、甲状軟骨(喉仏)、輪状軟骨、輪状咽頭筋(いんとうきん)などの一連の動きによって行われます。
咀嚼(そしゃく)が終わると舌の先端が挙上して口蓋(こうがい)に押し付けられ、軟口蓋が咽頭後壁に接触して鼻腔への食塊の流れ込みを防ぎます。
次に、舌全体を軟口蓋に付け、奥舌から食塊を喉頭蓋へと送り込みます。さらに舌根部を咽頭後壁に押し付け、食塊を咽頭に送り込みます。その時、喉頭蓋によって気管が閉じられ、食物が入るのを防ぎます。
次に甲状軟骨と輪状軟骨が前上方に動き、輪状咽頭筋が弛緩して食道入り口が開き、食塊を食道に送り込みます。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護技術のなぜ?ガイドブック』 (監修)大川美千代/2016年3月刊行/ サイオ出版