その症状、もしかしたらヤマカガシ咬傷かも?!|キケンな動植物による患者の症状【10】
前回は毒ヘビの代表であるマムシでしたが、今回はヤマカガシとアオダイショウについて解説します。
今年の7月に兵庫県で10歳の男児がヤマカガシに咬まれて重症というニュースを見た方もいるかもしれません。ヤマカガシは、過去には無毒なヘビとされていた時期もあったようですが、実は毒性は強く、重症化することもあるので注意が必要です。
また、アオダイショウについても解説をしています。ただ、アオダイショウは毒は持っていません。しかしながら、都市部でも比較的頻回に遭遇する可能性が高いヘビですので、対処法などは覚えておきましょう。
守田誠司
東海大学医学部付属病院 外科学系救命救急医学講座教授
〈目次〉
- ヤマカガシって、どんなヘビ?
- ヤマカガシに咬まれるとこんな症状が出る
- この傷(症状)が決め手!
- ヤマカガシ咬傷の処置・治療法
- ヤマカガシ咬傷はここにも注意!
- アオダイショウって、どんなヘビ?
- アオダイショウ咬傷の対処方法
ヤマカガシって、どんなヘビ?
ヤマカガシ(山楝蛇 Rhabdophis tigrinus)は、有鱗目ナミヘビ科ヤマカガシ属に分類されるヘビで、全長は60~120cm程度です。南西諸島、小笠原諸島、北海道を除く日本中に生息し、体色は個体差がありますが、黒と緑の斑模様に赤や黄色が混じっています。マムシに比べて、一回り大きく、やや派手なヘビです。
平地や山林などに生息しますが、カエルや魚を捕食するので水辺や水田地帯、湿地周辺などで多く目撃されます。頭を持ち上げて威嚇しますが、基本的にはおとなしい性質で攻撃的ではありません。ただ、必要以上に攻撃すると咬みついてきます。
ヤマカガシはマムシと同様に毒牙は2本ですが、前歯でなく奥歯が毒牙となっています(図1)。
つまり、奥まで咬まれないと毒が体内に入らないため、過去にはヤマカガシが無毒といわれていたこともあります。1973年にヤマカガシが有毒種であると報告されて以降、毒ヘビと認識されました。
ヤマカガシに咬まれるとこんな症状が出る
ヤマカガシは、毒性は強く、マムシの3倍程度(LD50の比較 ヤマカガシ:マムシ=5.3:16 mg/kg)と言われています。
ちなみに、LD50とはLethal Dose 50%の略で、毒が体内に入った時に医療介入がなければ50%が死亡する毒量、「50%致死量」を意味します。これは、毒の強さの指標として使用され、ヤマカガシは5.3mg/kgの毒量で50%死亡するのに対して、マムシは16mg/kgの毒量が必要ということになります。
この傷(症状)が決め手!
ヤマカガシの奥歯で咬まれるとマムシ同様に牙痕を2カ所認めます(図1)。このような牙痕がある場合には毒蛇の可能性が高く、局所が腫れていて痛みを強く訴える場合にはマムシの可能性が高く、牙痕はあるものの、腫脹も痛みも軽度で経時的に皮下出血が出現する場合にはヤマカガシの可能性が高いと考えます。
ヤマカガシ咬傷の処置・治療法
マムシ同様に体内に入る毒素量を減らすことで症状を軽減できるので、マムシの処置法でも紹介した以下の方法(図2)で持続吸引することが先決です。
なお、ヤマカガシも抗血清が存在しますが、一般的ではなく、基本的には対症療法が中心になります。
ヤマカガシ咬傷はここにも注意!
ヤマカガシの毒性は強く、小児や体格の小さい場合には重症化する可能性があるため注意が必要です。
アオダイショウって、どんなヘビ?
アオダイショウ(青大将、Elaphe Climacophora)は、ナミヘビ科ナメラ属に分類され、全長100~200cmと比較的長いヘビです(図3)。南西諸島以外の日本国内に生息し、腹側の両端に隆起があるため、木などに登ることができます。
個体差はありますが、体色は暗黄褐色からくすんだ緑色で、平地から山林、都市部に生息するため、国内ではもっとも遭遇する可能性の高いヘビです。
おとなしい性質で、基本的に攻撃してくることは少ないです。また図1で示すように毒牙はなく、咬まれても毒牙痕がないのが特徴です(図4)。
アオダイショウ咬傷の対処方法
アオダイショウには毒はないため、咬まれた場合の治療は、基本的に消毒する程度となります。しかし、帰宅後に、腫脹や疼痛が強くなる・皮下血腫などが出現する場合は再来を促すようにしてください。
[Design]
ロケットデザイン
[Illustration]
山本チー子