在宅人工呼吸療法患者の外出時は、なにに注意すればいい?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「在宅人工呼吸療法患者の外出」に関するQ&Aです。
中山優季
東京都医学総合研究所難病ケア看護プロジェクト副参事研究員
在宅人工呼吸療法患者の外出時は、なにに注意すればいい?
車椅子などの移動手段に、在宅人工呼吸器を確実に設置します。外出にあたっては、身体状態の安定と適切なケア、そして外出時間に足りる電源など必要物品の充足が必要です。
在宅人工呼吸療法中の外出
近年、在宅人工呼吸器の小型・軽量化が進み、可搬性が増し、車椅子に在宅人工呼吸器を搭載して外出を楽しむ療養者が増えている。
在宅人工呼吸器搭載可能な車椅子を図1に示す。外出時に必要なさまざまな装備を車椅子に搭載することが多いため、重心が後ろにかかり、バランスを欠きやすいことに注意する(車椅子については、『在宅人工呼吸療法患者はずっと寝たきりになってしまうの?』参照)。
在宅人工呼吸器回路が巻き込まれないようにすること、蘇生バッグをいつでも使える場所に用意することに加え、道路の凹凸などによる振動でずれたりしないような固定の工夫が必要である。
外出時の必要物品を表1に示す。必要物品をチェックリスト化しておくと忘れずにすむ。
これらの準備・安全対策を施したうえで外出し、リフト付き自動車やスロープを利用して電車に乗ると、行動範囲を拡大できる。
外出時には、外的環境の変化があり、普段聞こえるはずのアラームが聞こえないことも起こりうる。複数のケア者を準備し、必ず誰か1名は対象の表情を観察できる体制が必要である。
表2、表3に、外出時のヒヤリハット体験を示すので、参考にされたい。
表2外出時に生じた人工呼吸器系のトラブル(61件/全87件:70.1%)
表3外出時に生じた人体系・その他のトラブル(23件/全87件:29.9%)
[文献]
- (1)8020推進財団;平成20年3月㈶8020推進財団指定研究,「入院患者に対する包括的口腔管理システムの構築に関する研究」研究班,主任研究者:寺岡加代.:入院患者に対するオーラルマネジメント.8020推進財団,東京,2008.
- (2)川村佐和子監修,中山優季編:ナーシングアプローチ難病看護基礎と実践.桐書房,東京,2014.
- (3)石川悠加 編:NPPVのすべて これからの人工呼吸.医学書院,東京,2008.
- (4)中山優季:在宅人工呼吸ケア.道又元裕編,人工呼吸ケア「なぜ・何」大百科,照林社,東京,2008:457.
- (5)中山優季:在宅人工呼吸療法の実際.道又元裕,小谷透,神津玲編,人工呼吸管理実践ガイド,照林社,東京,2009:292-302
- (6)川口有美子,小長谷百絵編著:在宅人工呼吸器ポケットマニュアル.医歯薬出版,東京,2009.
- (7)特定疾患患者の生活の質(QOL)の向上に関する研究班「工呼吸器装着者の訪問看護研究」分科会編:人工呼吸器を装着しているALS療養者の訪問看護ガイドライン.2000.
- (8)東京都福祉保健局:難病患者在宅人工呼吸器導入時における退院調整・地域連携ノート.http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/joho/soshiki/hoken/shippei/oshirase/taiintyousei_tiikirenkeinoto.files/tiintyouseirenkeino-to250711.pdf(2014年11月18日閲覧).
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社