在宅人工呼吸の際、自宅には、なにを用意する必要があるの?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「在宅人工呼吸の実践」に関するQ&Aです。
中山優季
東京都医学総合研究所難病ケア看護プロジェクト副参事研究員
在宅人工呼吸の際、自宅には、なにを用意する必要があるの?
人工呼吸器・吸引器などの医療機器や確実な作動のための電源、ケアに必要な物品など多くの機器や物品、環境を必要とします。
HMV(在宅人工呼吸療法)に必要なもの
HMV(在宅人工呼吸療法)*にあたっては、医療機器、衛生材料など医療にかかわるもの(人工呼吸器関係・気道ケア関係・経管栄養関係[必要時])、生活にかかわるものなど、さまざまなものが必要となる(表1)。
必要物品には、医療保険・介護保険・障害者総合支援法など社会制度によって給付あるいは貸与等されるものや、衛生材料など反復・継続的に供給すべき物品がある。
衛生材料は、診療報酬上「必要なものを十分に供給する」とされているが、対象の状態によって必要なものや1日の消費量は異なる。加えて、医療機関による違いもある。在宅療養指導管理料の算定医療機関がHMV後に変わる場合などには特に留意する。「在宅療養移行支援」のなかで、入院中から制度を活用した準備を心がけ、衛生材料等の供給内容と量の取り決めを行うとよい(『在宅人工呼吸療法に、スムーズに移行するコツは?』)。
昨今、災害対策が重視されていることから、医療機器の正常作動のための電源確保が十分なされているか留意する。特に自費での必要物品は、対象の経済状態に依存せざるを得ない。
これらの必要物品は、退院時(移行時)にそろえればよいわけではない。「必要時に適切に使用できる」状態になるよう、使用方法についての指導、バッテリーなど消耗品についての定期的な作動状況のチェックなど、アフターフォローも重要な支援である。
既製品が使えず、各家庭に応じた工夫が生じる場合(吸引器具の保管方法やチューブネックホルダーの作成など)がある。これこそ在宅療養ならではの醍醐味ではあるものの、その工夫がHMVの安全な施行を阻害しないことを、医療面からアセスメントできるとよい。
- HMV(home mechanical ventilation):在宅人工呼吸療法
[文献]
- (1)8020推進財団;平成20年3月㈶8020推進財団指定研究,「入院患者に対する包括的口腔管理システムの構築に関する研究」研究班,主任研究者:寺岡加代.:入院患者に対するオーラルマネジメント.8020推進財団,東京,2008.
- (2)川村佐和子監修,中山優季編:ナーシングアプローチ難病看護基礎と実践.桐書房,東京,2014.
- (3)石川悠加 編:NPPVのすべて これからの人工呼吸.医学書院,東京,2008.
- (4)中山優季:在宅人工呼吸ケア.道又元裕編,人工呼吸ケア「なぜ・何」大百科,照林社,東京,2008:457.
- (5)中山優季:在宅人工呼吸療法の実際.道又元裕,小谷透,神津玲編,人工呼吸管理実践ガイド,照林社,東京,2009:292-302
- (6)川口有美子,小長谷百絵編著:在宅人工呼吸器ポケットマニュアル.医歯薬出版,東京,2009.
- (7)特定疾患患者の生活の質(QOL)の向上に関する研究班「工呼吸器装着者の訪問看護研究」分科会編:人工呼吸器を装着しているALS療養者の訪問看護ガイドライン.2000.
- (8)東京都福祉保健局:難病患者在宅人工呼吸器導入時における退院調整・地域連携ノート.http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/joho/soshiki/hoken/shippei/oshirase/taiintyousei_tiikirenkeinoto.files/tiintyouseirenkeino-to250711.pdf(2014年11月18日閲覧).
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社