在宅での吸引や経管栄養は、誰が実施してもいいの?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「在宅での吸引や経管栄養の実施」に関するQ&Aです。

 

原口道子
東京都医学総合研究所難病ケア看護プロジェクト主任研究員

 

在宅での吸引や経管栄養は、誰が実施してもいいの?

 

医師・看護師等の医療職員に加えて、一定の研修を修了して認定証を取得した介護職員等も、安全性確保等の要件整備下において提供できます。

 

在宅での吸引・経管栄養の実施

近年、在宅で吸引や経管栄養を必要とする療養者が増加し、家族介護者の負担増加が社会問題化した。これを受けて、平成15(2003)年「ALS患者の在宅療養支援について;医政局長通知0717001号」が発出され、これまで介護職員など家族以外の者による喀痰吸引が一定の要件下で許容されてきた経緯がある。

 

平成24年6月22日に「介護保険サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」が公布され、介護福祉士および一定の研修を受けた介護職員等は、一定の条件下で喀痰吸引・経管栄養の定められた範囲の行為(特定行為)を実施できることとなった。

 

介護職員が実施できるようになるまでには、「研修の受講・認定証取得・登録事業所への所属・医師からの指示書・個別具体的方法の取得」という過程があり、この過程において、医師・看護職員は連携・協力が求められる可能性がある(図1)。

 

図1介護職員等が痰吸引等の実施に至るまでのながれと看護職員の役割

 

原口道子:在宅での看護職員と介護職員等との連携のポイント.コミュニティケア2012;14(12):53-57.より引用

 

喀痰吸引・経管栄養は、安全に行われなければ療養者に危険を及ぼす行為であり、医行為であることに変わりはなく、介護職員等の実施の要件の1つに「医療関係者との連携に関する事項(表1)」が定められている。

 

表1介護職員等による痰吸引等の実施における医療関係者との連携に関係する事項[抜粋]

 

介護職員等による痰吸引等の実施における医療関係者との連携に関係する事項[抜粋]
  1. 1. 介護職員等による痰吸引等の実施に際し、医師の文書による指示を受ける
  2. 2. 対象者の状態について、医師または看護職員による確認を定期的に行い、対象者の心身の状況に関 する情報を介護職員等と共有することにより、医師または看護職員および介護職員等の間における連携を確保するとともに、適切な役割分担を図る
  3. 3. 対象者の希望、医師の指示および心身の状況を踏まえて、医師または看護職員との連携の下に、痰 吸引等の実施内容その他の事項を記載した計画書を作成する
  4. 4. 痰吸引等の実施状況に関する報告書を作成し、医師に提出する
  5. 5. 対象者の状態の急変等に備え、速やかに医師または看護職員への連絡を行えるよう、緊急時の連絡 方法をあらかじめ定めておく
  6. 6. 上記の事項など必要な事項を記載した痰吸引等業務に関する書類(業務方法書)を作成する

 

※「社会福祉士及び介護福祉士法施行規則の一部を改正する省令」(平成23年10月3日厚生労働省令第126号)より抜粋引用

 

医師・看護職員・介護職員等には、同じ療養者を支援するチームとして情報共有や適切な役割分担を図り、連携・協力して安全で安定的な療養生活を担保することが期待されている。

 


[文献]

  • (1)石原英樹:在宅人工呼吸療法(HMV).呼吸ケア2009;7(7):97-98.
  • (2)石原英樹,坂谷光則,井上義一,他:在宅呼吸ケアの現状と課題−平成19年度全国アンケート調査結果−.労働科学研究費補助金難治性疾患克服事業呼吸不全に関する調査研究班平成19年度研究報告書2007:60-63.
  • (3)宍戸克子:在宅人工呼吸療法.呼吸ケア 2009;夏季増刊:247-256.
  • (4)木村謙太郎:在宅酸素療法.在宅人工呼吸療法導入背景と現状、実際.在宅呼吸療法事業ハンドブック2003,アズクルー,大阪,2002.
  • (5)中山優季:在宅人工呼吸ケア.道又元裕編,人工呼吸ケア「なぜ・何」大百科,照林社,東京,2005:457.
  • (6)中山優季:在宅人工呼吸療法の実際.道又元裕,小谷透,神津玲編,人工呼吸管理実践ガイド,照林社,東京,2009:292-302.
  • (7)原口道子:在宅での看護職員と介護職員等との連携のポイント.コミュニティケア2012;14(12):53-57.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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