NO吸入療法の開始及び中止基準は?回路の構造は?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「NO吸入療法」に関するQ&Aです。

 

三浦規雅
東京都立小児総合医療センターPICU主任

 

NO吸入療法の開始および中止基準は? 回路の構造は?

 

NO吸入療法は、効果の得られる最低濃度で行います。減量・中止時は、リバウンド現象に注意が必要です。

 

〈目次〉

 

NO吸入療法

NOは、酸素と反応して強い毒性を有するNO2(二酸化窒素)を発生する。

 

NO2産生量は、NO濃度、酸素濃度、NOと酸素の接触時間の長さに比例するため、吸入NO濃度は、効果が得られる最低濃度で使用する。

 

NO吸入療法の開始基準

NO吸入量法開始時は、FIO21.0、20ppmで開始し、効果を判定し、効果を得られる最低濃度まで下げていく。

 

NO濃度は、原則20ppm上限とする。これより高濃度のNO吸入量法での有用性は低いとされている。

 

NO吸入療法の中止基準

急激にNOの減量・中止を行うと、肺高血圧症や低酸素血症の増悪をきたしやすい(リバウンド現象)ため、徐々に減量していく。なるべく低い濃度(1ppm以下)から中止し、中止する際には酸素濃度を一時的に上げる。

 

平滑筋弛緩に関与しなかったNOは、血管内でHb(ヘモグロビン)と結合し、MetHb(メトヘモグロビン)となる。MetHbからは、酸素結合、運搬機能が失われているため、過剰となると低酸素血症をきたす。

 

MetHbが1〜2%以上になった状態をメトヘモグロビン血症という。国立成育医療研究センターPICUでは、MetHb2.0%以上でNO吸入療法の中止を検討している。

 

NO吸入療法の回路の構造

アイノベント®・アイノフロー®を用いたNO吸入療法の回路を図1に、工業用一酸化窒素を用いたNO吸入療法の回路を図2に示す。

 

図1アイノベント®・アイノフロー®を用いたNO吸入療法の回路

 

図2工業用一酸化窒素を用いたNO吸入療法の回路

 

 

 

 


[文献]

  • (1)斉藤修:HFOV.救急・集中治療 2010;22:360.
  • (2)宮坂勝之,中川聡:肺循環障害とNO.CLINICIAN 1996;456:64-70.
  • (3)中村知夫,高田正雄,宮坂勝之:一酸化窒素(NO)と小児肺高血圧症.小児科1995;36:997-1005.
  • (4)志馬信朗,橋本悟,問田千晶:小児ICUマニュアル改訂第6版,永井書店,大阪,2012:50/121-122.
  • (5)坂井裕一:小児ICUにおけるNO吸入療法.ICUとCCU1995;19:1037-1043.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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