どのタイミングで、栄養管理を開始する?|人工呼吸管理中の栄養管理

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「人工呼吸中の栄養管理を開始するタイミング」に関するQ&Aです。

 

清水孝宏
那覇市立病院看護部看護師長

 

どのタイミングで、栄養管理を開始する?

 

病態によってタイミングを見計らう必要もありますが、24時間以内の早期経腸栄養の開始が強く勧められています。

 

〈目次〉

 

早期経腸栄養の開始

栄養管理の開始時期について多くのガイドラインが勧めているのが、早期経腸栄養の開始である。

 

早期経腸栄養の開始については、以前から感染性合併症の発生率の低下がその効果として期待されてきた。そのため、消化管が使用できる状態であれば、積極的に消化管を用いるべきである。

 

病態によりタイミングを見計らう場合

持続する消化管出血や腸閉塞、あるいは、ショックのような循環変動の激しい患者に対しては栄養の開始を見送る場合もある。

 

1循環変動が激しい場合

ショック状態にある患者に対しては、十分な細胞外液輸液の補充と昇圧薬による血圧の維持が最優先される。

 

栄養の開始については、平均血圧60mmHg以下、尿量0.5mL/時以下、ドパミン5~8γ以上、ノルアドレナリン0.2γ以上など、さまざまな指標が用いられる。

 

ドパミンやノルアドレナリンなどのカテコラミン使用量が減量でき、循環動態が安定してきているのであれば、少量ずつ経腸栄養を開始することが、前述した免疫機構を担う消化管の機能を維持する目的からも重要と考えられる。

 

2消化管が使えない場合

消化管の使えない状態にある患者の静脈栄養については、入院前からの栄養不良状態であれば、できる限り早期に開始し、栄養不良状態がなければ1週間くらいは静脈栄養は投与せずに様子を見ても問題はないとの見解もある。

 


[文献]

  • (1)飯干泰彦,岡田正:腸粘膜萎縮の病態とその対策静脈栄養時にみられる腸粘膜の形態学的変化.JJPN1995;17:459-462.
  • (2)氏家良人,海塚安郎,佐藤格夫,他:急性呼吸不全による人工呼吸患者の栄養管理ガイドライン2011年版.人工呼吸 2012;29:75-120.
  • (3)McClave SA, Martindale RG, Vanek VW, et al. Guidelines for the Provision and Assessment of Nutrition Support Therapy in the Adult Critically Ill Patient: Society of Critical Care Medicine (SCCM)and AmericanSociety for Parenteral and Enteral Nutrition(ASPEN). JPEN 2009; 33: 277- 316.
  • (4)Clinical Evaluation Research Unit:Practice Guideline 2013, http://www.criticalcarenutrition.com(2014年11月18日閲覧).
  • (5)Singer P, Berger MM, van den Berghe G, et al. ESPEN Guidelines on Parenteral Nutrition: intensive care. Clin Nutr 2009:28:387-400.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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