中心静脈カテーテル刺入部の皮膚に発赤がなければ感染はない?

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「カテーテル関連血流感染症(CRBSI)」に関するQ&Aです。

 

白野倫徳
大阪市立総合医療センター感染症内科医長
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

中心静脈カテーテル刺入部の皮膚に発赤がなければ感染はない?

 

いいえ。刺入部に発赤がなくても、カテーテル関連血流感染症(CRBSI)は否定できません。

 

〈目次〉

 

なぜ刺入部の発赤の有無だけで否定してはいけない?

アメリカ感染症学会(Infectious Diseases Society of America:IDSA)により2009年に発表された血管内カテーテル感染症の診断と治療のガイドライン(1)によると、刺入部の発赤や膿の存在は、カテーテル関連血流感染症(catheter related blood stream infection:CRBSI)の診断に際し特異度は高いですが、感度は乏しいとされています。

 

つまり、発赤や膿などの所見があればCRBSIである確率は高くなりますが、所見がないからといってCRBSIの否定にはならないということです。

 

刺入部の発赤の有無だけで否定してはいけない根拠は?

中心静脈カテーテル(central venous catheter:CVC)留置中における微生物の侵入門戸は、刺入部の汚染以外にもさまざまなものがあります(図1)。

 

図1血管内カテーテル留置中の患者における微生物汚染源

血管内カテーテル留置中の患者における微生物汚染源

 

CRBSI(カテーテル関連血流感染症)の原因の1つに、CVC挿入時に皮膚や周囲に存在している微生物を押し込み、それが血管内においてカテーテル表面で増殖することにより血流感染を起こすことが挙げられます。また、薬液そのものやルート接続部、三方活栓などが汚染された場合は、カテーテル内部に微生物が侵入することになります。これらの場合、刺入部には変化は現れません。

 

カテーテル関連血流感染症(CRBSI)を予防するための、適切な管理は?

まず、CVCの挿入時に微生物を押し込まないため、マキシマル・バリアプリコーション(高度無菌遮断予防策)が重要になります(図2)。

 

図2中心静脈カテーテル挿入時の  マキシマル・バリアプリコーション

中心静脈カテーテル挿入時の  マキシマル・バリアプリコーション

 

点滴の調整時、実施時の手指衛生など標準予防策はいうまでもありません。日々の刺入部の観察も大切ですが、発赤がなくても発熱や急なバイタルサインの変化があれば、CRBSI(カテーテル関連血流感染症)を疑って血液培養を2セット実施し、可能ならばCVCを抜去し、カテーテル先端も培養検査に提出することが重要です。

 

 


 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

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