人工呼吸器装着患者の呼吸リハビリテーションでは、どんなことに注意すればいいの?
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『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「人工呼吸器装着患者の呼吸リハビリテーションでの注意点」に関するQ&Aです。
下地大輔
東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科
人工呼吸器装着患者の呼吸リハビリテーションでは、どんなことに注意すればいいの?
起こりうる有害事象
2007年のBaileyらの報告では、人工呼吸器装着患者103人(指示理解が可能で起立性低血圧の症状なし、カテコラミン投与なし)に対して、座る・歩くなどのリハビリテーションを実施した1449回のうち、生じた有害事象は14件であった。内訳は転倒が5件、収縮期血圧90mmHg以下への低下が4件、酸素飽和度80%以下への低下が3件、胃管抜去と収縮期血圧上昇が各1件ずつであった1。
リハビリテーション時の血圧や酸素飽和度の変動は、有害事象の半分以上を占めており、動作時の呼吸循環モニタリングは必須である。特に急性期では、人工呼吸器設定や投薬量の変化を把握し、リハビリテーションを行うことがリスク管理として重要である。
リハビリテーションや離床を行う際、「目の前の人工呼吸器装着患者が適応か否か」の判断が、非常に重要となる。右頁にプロトコールについて示す2, 3(図1)。
実施時の注意点
患者の姿勢を変える体位変換や離床は、リハビリテーションを進めるうえで、最も有害事象が起きやすい瞬間である。
特に人工呼吸器装着患者では、動作を行う前に患者の意識レベルや呼吸器回路のチェック、ドレーン・カテーテル類などの周辺環境を整理することが重要である。
マンパワーが不足していると判断した場合には、迷わず応援を呼ぶことが重要である。
[文献]
- (1)Bailey P, Thomsen GE, Spuhler VJ, et al. Early activity is feasible and safe in respiratory failure patients. Crit Care Med 2007; 35: 139-145.
- (2)Balas MC, Vasilevskis EE, Bruke WJ, et al. Critical Care Nurses’ Role in implementing the “ABCDE Bundle” into Practice. Crit Care Nurse 2012; 32: 35- 47.
- (3)Stiller K. Sefety issues that should be considered when mobilizing critically ill patients. Crit Care Clin 2007; 23: 35-53.
- (4)日髙幸彦 : 体位ドレナージ・リハビリテーションのトラブル. エキスパートナース 2009; 25: 76-81.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社