人工呼吸中の圧外傷は、どのように予防すればいいの?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「人工呼吸中の圧外傷の予防」に関するQ&Aです。
塚原大輔
日本看護協会看護研修学校認定看護師教育課程特定行為研修担当教員
圧外傷は、どのように予防すればいいの?
肺胞の過伸展を防ぐ肺保護戦略(一回換気量とプラトー圧の制限)と、肺胞の虚脱・再開通を防ぐオープンラングアプローチ(適切なPEEPをかけること)により、圧外傷を回避します。
〈目次〉
VALI(人工呼吸器関連肺損傷)
VALIの原因は、不均一な病変に対して生じる肺胞の過伸展と虚脱・再開通による肺胞へのストレスである(『人工呼吸中の圧外傷ってなに?どうして起こるの?』)。
肺保護戦略
肺胞の過伸展を予防するためには、一回換気量を制限(6mg/kg理想体重以下)するとともに、プラトー圧を制限(30cmH2O以下)する。これは「肺保護戦略」と呼ばれ、ARDS患者の人工呼吸器管理における基本戦略である。
VALIの予防に関しては、プラトー圧よりも一回換気量のほうが予後に影響を与えると考えられている。
オープンラングアプローチ
虚脱・再開通の予防については、酸素化を改善させ、肺胞虚脱、無気肺、ずり応力の発生を防ぐためPEEPを使用することが推奨されている。
適切なPEEP値については、肺の損傷レベルが患者個々によって異なるため、その至適値を画一的に決定することはできない。
肺胞の再開通のためには高いPEEP設定が必要となるが、PEEPが高値になると、当然プラトー圧は高くなる。
プラトー圧が1cmH2O上昇すると、死亡リスクが3%有意に上昇することがわかっている。そのため、吸気プラトー圧は低く、PEEPを低く設定したほうがよいということになるが、これでは虚脱肺を再開通することができず、逆に死亡率が上昇する可能性も示唆されている。
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社