「簡易懸濁法」に関するギモン|PEGケアQ&A
『病院から在宅までPEG(胃瘻)ケアの最新技術』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「簡易懸濁法」に関するギモンについて説明します。
岡田晋吾
北美原クリニック理事長
〈目次〉
- 複数種類の薬剤を投与する場合、1本のシリンジで、まとめて懸濁してもいいですか?
- 半固形化栄養材を使用している場合、水分や懸濁した薬剤も、半固形化したほうがいいですか?
- 在宅で、簡易懸濁法を指導することはできますか?
複数種類の薬剤を投与する場合、1本のシリンジで、まとめて懸濁してもいいですか?
多くの場合、問題ないと考えられますが、他剤に影響を及ぼす薬剤もありますので、必ず薬剤師に相談してから実施しましょう。
健常者が一緒に複数の薬剤を服用するように、多くの場合は1本のシリンジにまとめて懸濁してもかまわないと思います。ただし、薬剤によっては他剤に影響を与える場合もあるため、注意が必要です(→『栄養剤投与の手技』表1参照)。
このことは、医師や看護師ではなかなかわかりません。簡易懸濁法に適しているかも含め、薬剤師に相談する必要があります。
製薬会社のMRも、薬剤懸濁後の変化についてまでは、わからないこともあります。倉田なおみ氏が、実際に実験した結果を詳細にまとめた書籍1がありますので、参考にするといいでしょう。
薬剤を溶解したまま放置すると、沈殿や配合変化を起こすこともあります。懸濁後は、なるべく早く投与しましょう。
半固形化栄養材を使用している場合、水分や懸濁した薬剤も、半固形化したほうがいいですか?
水分のまま投与して問題なければ、半固形化する必要はありません。
半固形化栄養法を行っている患者に水分を補給する場合、半固形化したほうがいいかどうかは、特に決まっていません。
水分のまま入れても問題がなければ、水分も、懸濁した薬剤も、半固形化せずに、そのまま入れてかまいません。
顆粒投与時は「jerry sandwich(ゼリーサンドイッチ)法」も
半固形化ではありませんが、オピオイドなど、できるだけシリンジやカップなどに残留させないように投入したい場合に、「jelly sandwich法」という方法を行っている施設もあります2。
これは、カテーテルチップにゼリー(ウイダーinゼリーなど)を入れたあと、脱カプセルした顆粒を入れ、その上に、さらにゼリーを入れてサンドイッチ状にして投与する方法です。この方法を取ると、顆粒を一粒残らず入れることができます。
在宅で、簡易懸濁法を指導することはできますか?
もちろん可能です。調剤薬局などとうまく連携し、パンフレットなどを用いて、薬剤師に指導してもらうとよいでしょう。
現在でも、病院入院中に簡易懸濁法を指導されてくることはまだまだ少ないです。入院期間が短いせいもありますが、すべてを粉砕法で一包化することで、なんとか対応できているためとも思います。
しかし、抗血栓薬などを飲んでいる方など、1つひとつの薬剤がわかる簡易懸濁法のほうがよいと感じる患者も多くおられます。
在宅で簡易懸濁法を指導する場合、訪問看護師が行うことが多いことでしょう。しかし、薬剤が簡易懸濁法に適しているかどうかの判断も含めて、薬剤師に指導してもらったほうが確実です。
北美原クリニックでは、調剤薬局の薬剤師に訪問を依頼して、指導してもらっています。指導の際に用いる教材として作成してもらったパンフレットを図1に示します。
[引用・参考文献]
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2010照林社
[出典] 『PEG(胃瘻)ケアの最新技術』 (監修)岡田晋吾/2010年2月刊行/ 照林社