受動的ドレーンと能動的ドレーンの違いは?
『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「受動的ドレーンと能動的ドレーンの」に関するQ&Aです。
大平 豪
大阪市立大学大学院医学研究科肝胆膵外科病院講師
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長
受動的ドレーンと能動的ドレーンの違いは?
陰圧を用いてドレナージを行うかどうかということです。
〈目次〉
術後のドレーンは、手術の方法や部位によって使い分ける
術後のドレーンにはさまざまな種類があります。大きく受動的ドレ―ンと能動的ドレーンに分類され、手術の方法や部位によって使い分けます(表1)。
受動的ドレーンは陰圧を用いず、自然の落下圧差、重力、腹圧や毛細管現象などを利用してドレナージを行います。一方、能動的ドレーンは陰圧で持続吸引することでドレナージを行います。
受動的ドレーンの特徴と適用
受動的ドレーンは、胃や大腸その他の多くの手術で使用します。腹腔内に留置したドレーンを一般的な排液バッグに接続し、体より低い位置に下げることで、腹圧、圧較差や重力を利用して排液します。
術後に体内に貯留する滲出液(漿液、リンパ液や血液など)をドレナージする場合は受動的ドレーンで特に問題はなく、縫合不全等の可能性がなければ、逆行性感染の危険性もあるため、早期に抜去します。
最近の排液バッグは逆流防止弁がついており、同部まで液体で満たされれば、サイフォンの状態(圧力差を利用して、液体をその液面より高いところへいったん導いてから低いところに移す)になり、腹腔内に貯留した液体を体外へドレナージします。
さらにドレーン内腔に多数の細い管腔や溝が付いており、毛細管現象を利用して排液するタイプのドレーンもあります。膵頭十二指腸切除後の術後の膵管チューブや胆管チューブなどは、チューブも細く、チューブ内に空気が入るとドレナージが悪くなるため、チューブ内を生理食塩液などで満たし、サイフォンの状態にして管理します。
受動的ドレーンの場合でも、例えば直腸がんの術後に縫合不全が起こった場合には、そのドレーンを持続低圧吸引することで、漏れ出た腸液や便が腹腔内に広がらないように吸引し、瘻孔化しやすくします。そうすることで、再手術を回避して治療できる場合があります。
能動的ドレーンの特徴と適用
能動的ドレーンは、備え付けや携帯型の機械を使用して陰圧を用い排液します。
例えば食道がんや肺がんの術後に胸腔内に留置するドレーンや、頸部のリンパ節郭清後や乳がん腋窩リンパ節郭清後に頸部や腋窩に留置するドレーンのことです。
胸腔内は陰圧のため、通常のドレーンの場合は空気や排液は胸腔に引き込まれてしまいます。肺も虚脱してしまい、呼吸ができなくなるため、-10~15cmH2Oで持続吸引が必要です。
頸部のリンパ節郭清や乳がんの腋窩郭清などの場合は、頸部や腋窩などでは滲出液が少し貯留するだけで、首が腫れて息苦しくなったり、腋が腫れて違和感が出現したり、腕が動かしにくくなったりといった症状が出やすいため、液体がたまりにくくなるように持続低圧吸引をかけて能動的に排液します。
排液後、排液口の消毒は必要ですか?
不潔に扱うのはよくないですが、 排液のたびに消毒する必要はありません。
[文献]
- (1)今泉俊秀,羽鳥隆,原田信比古,他:術中・術後 の基本的ドレナージ.消化器外科 2001;24:499- 509.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社