患者によって気管チューブの固定方法をどう変えるの?選択基準は?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「気管チューブの固定方法」に関するQ&Aです。
露木菜緒
一般社団法人Critical Care Research Institute(CCRI)
患者によって気管チューブの固定方法をどう変えるの?選択基準は?
固定方法は、鎮静レベルによって変更します。鎮静が浅いときほど、テープ固定の支持面を広くし、体動や重力によって気管チューブにかかる力を、多方向から固定できるようにしましょう。
〈目次〉
気管チューブの固定
チューブ固定の最大の目的は「気管チューブの確実な固定」である。確実に固定でき、さらに「皮膚障害予防」と「ケアのしやすさ」を考慮して固定方法を選択する。
固定方法に決まったやり方はない。各施設の基準・手順を確認して実施する。
以下に、テープによる固定方法と選択例を、固定力の強い順に示す。
4面固定(図1)
皮膚とテープの接着面が4面ある固定法である。チューブを支点に、①上顎、②頬の上側、③下顎、④頬の下側の4方向でチューブを支持する。固定力が最も強く、固定テープの貼付範囲が広い。
4面固定には、テープ2本を使う方法(図1-方法1)と、切り込みを入れたテープを2枚重ねて固定する方法(図1-方法2)がある。
鎮静が浅く(RASS2以上など)、事故抜去のリスクの高い患者に有効である。
最も一般的で推奨されている。
3面固定(図2)
3面固定には、皮膚とテープの接着面が3面ある固定法である。チューブを支点に、①上顎、②下顎、③頬の3方向でチューブを支持する。
2面固定(図3)
2面固定は、皮膚とテープの接着面が2面(口唇から左右へ)ある固定法である。
4面固定より固定力が低いため、鎮静が深く(RASS3以下など)、事故抜去のリスクの低い患者に適応される。
3面固定を応用した方法(図3-方法1)と、チューブを支点に上顎と頬の2方向による2面固定(図3-方法2)がある。
接着面積が小さいため、皮膚が脆弱な患者に有効である。流涎などの影響も受けにくい。
チューブが引っ張られ、口腔でのチューブのたわみの原因となるため、必ずチューブを中心に左右対側に支持できるように固定する。チューブを中心に同側の上下2方向への支持(図3-注意)は、固定力が低くなるため避ける。
1面固定(図4)
皮膚とテープの接着面が口唇の上1面だけの固定法である。潰瘍形成などで口角固定できないときに有効である。
開口を妨げないが、剥がれやすいため、鎮静が深く、事故抜去のリスクが低い患者にのみ適応となる。
固定力が弱いため、事故抜去への十分な注意が必要となる。
略語
- RASS(RichmondAgitation-SedationScale):リッチモンド鎮静興奮スケール
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社