閉鎖式気管吸引と開放式気管吸引は、どう違うの?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「閉鎖式気管吸引と開放式気管吸引」に関するQ&Aです。

 

露木菜緒
一般社団法人Critical Care Research Institute(CCRI)

 

閉鎖式気管吸引と開放式気管吸引は、どう違うの?

 

吸引時に「大気に開放されるかどうか」が違います。
閉鎖式は、人工呼吸器回路に吸引カテーテルを組み込み、大気に開放せず人工呼吸器による補助換気を行いながら吸引する方法です。
一方、開放式は、いったん人工呼吸器回路を外し、大気に開放してから吸引する方法です。

 

〈目次〉

 

閉鎖式気管吸引と開放式気管吸引

閉鎖式気管吸引は、大気に開放されず、人工呼吸器による補助換気を行いながら吸引できるため、PEEPや肺容量を維持でき、低酸素血症を予防できるなど、愛護的な気管吸引が可能となる。

 

閉鎖式気管吸引と開放式気管吸引を比べても、分泌物の吸引量は変わらない。

 

閉鎖式気管吸引のメリットとデメリットを以下に示す。

 

閉鎖式気管吸引のメリット(表1

表1閉鎖式気管吸引のメリット

 

閉鎖式気管吸引のメリット
  • 呼吸器回路の接続を外すことによる分泌物の飛散回避
  • 呼吸器回路の接続を外すことによる低酸素状態の回避
  • 呼吸器回路の接続を外すことによるPEEP解除の回避
  • 吸引操作のたびのスタンダードプリコーションの回避
  • 吸引所要時間の短縮
  • 吸引に要する物品数の減少

 

閉鎖式気管吸引は、人工呼吸器の補助を受けながら吸引できる。そのため、原理的に、気管吸引の合併症である低酸素血症・肺胞虚脱などの予防に優れている。

 

人工呼吸管理では、PEEP付加が重要である。開放式気管吸引時に、PEEPが解除されると、肺胞虚脱や低酸素血症を助長するなど、肺機能に大きな侵襲を与える。しかし、閉鎖式回路であれば、PEEPを解除せず、肺容量を維持したまま吸引できる(図1)。

 

図1気管吸引による酸素化への影響

 

Cereda M, Villa F, Colombo E, et al. Closed system endotracheal suctioning maintains lung volume during volume-controlled mechanical ventilation. Intensive Care Med 2001;27:648-654.

 

分泌物の飛散などによる感染問題も最低限とすることができる。

 

ARDS(急性呼吸窮迫症候群)など呼吸状態が大きく悪化した患者や、易感染状態の患者には、特に閉鎖式気管吸引が適している。

 

閉鎖式気管吸引のデメリット

吸引カテーテルの内腔洗浄時、洗浄液を注入するタイミングと吸引圧をかけるタイミングがずれると、洗浄液が気管に流れ込む。

 

吸引カテーテルを、マーカーの適切な位置まで引き抜かないと、洗浄液が気管に流れ込んでしまう。逆に、吸引カテーテルをマーカーの適切な位置以上に引き抜くと、スリーブ内にガスが漏れてしまう。

 

閉鎖式気管吸引キットの価格は高価である。ただし、吸引で必要とする物品経費を合計すると、それほど変わらないともいわれる。

 

略語

 

  • ARDS(acuterespiratorydistresssyndrome):急性呼吸窮迫症候群
  • Paw(airwaypressure):気道内圧

[文献]

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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