閉鎖式気管吸引の方法
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「閉鎖式気管吸引の方法」について説明します。
〈目次〉
- 準備
- 気管吸引の必要性の判断
- 患者への説明
- 必要物品の準備
- スタンダードプリコーションの実施
- 吸引前の酸素化
- 吸引実施
- 吸引圧の設定
- 口腔・カフ上部吸引
- 吸引カテーテル挿入の準備
- 吸引カテーテルの挿入
- 吸引
- 吸引後
- 吸引カテーテル内腔の洗浄
- 終了後
準備
1気管吸引の必要性の判断
気管分岐部の聴診(副雑音の聴取)、グラフィックモニタなどで、気管吸引の必要性を判断する。
2患者への説明
意識の有無にかかわらず、吸引の必要性、どんなことをするのか説明する。
3必要物品の準備
閉鎖式吸引キット、吸引器、洗浄用生理食塩液、手袋(未滅菌)、アルコール綿
4スタンダードプリコーションの実施
手洗いを行い、手袋を着用する。
5吸引前の酸素化
人工呼吸器の100%酸素換気モードにて、吸引前に酸素投与を実施する。
吸引実施
1吸引圧の設定
吸引圧を20~25kPa(150~200Torr)に合わせる。
2口腔・カフ上部吸引
吸引前に、口腔吸引さらにカフ上部吸引(ポートがある場合のみ)を実施する。
3吸引カテーテル挿入の準備
手袋を装着する。
コネクティングチューブを吸引コントロールバルブに接続し、バルブを180度回転させて開く。
4吸引カテーテルの挿入
気管チューブとL字型コネクターの接続部を持ち、スリーブをたぐり上げながら、吸引カテーテルを挿入する。
気管チューブと吸引カテーテルの目盛りが合ったところから2〜3cm進める。
5吸引
気管分岐部直上まで挿入できたら、吸引圧をかけるコントロールバルブを押さないと、吸引圧はかからない。
気管分岐部から1~2cmまでは、ゆっくり(5秒程度)陰圧をかけながら吸引カテーテルを引き戻す。痰は、気管分岐部直上に多い(体位ドレナージは、ここに痰を集めるように行っている)ため、ここをゆっくり吸引する。分泌物のある場所では、一時止めてもよい。
吸引カテーテルが気管チューブ内に入ったら、さっと引き抜く。閉鎖回路を維持するため、黒い印の部分まで引き抜くことが重要である。
吸引時間は10秒以内で、できる限り短い時間で行う。
吸引後
1吸引カテーテル内腔の洗浄
痰の性状を確認する。
吸引圧をかけながら、洗浄液注入ポートをアルコール綿で消毒する。
洗浄液(生理食塩液)10mL程度を注入し、吸引カテーテル内腔を洗浄する。十分に洗い流すことが重要であるため、洗浄液を少なくしたり、次に使い回したりしない。
洗浄が終わったら、すぐに洗浄液注入ポートから洗浄液を外す。洗浄液注入ポートに洗浄水をつけたままにすると、洗浄水が気管へ逆流するリスクとなる。
2終了後
バルブを180度回転させ、ロックする。
手洗い・手指消毒を行う。
吸引効果の評価をする。
[文献]
- (1)Cereda M, Villa F, Colombo E, et al. Closed systemendotracheal suctioning maintains lung volume during volume-controlled mechanical ventilation. Intensive Care Med2001;27:648-654.
- (2)小泉恵,門脇睦美:研究の動向と問題点.ナーシングトゥデイ1998;13:28-32.
- (3)坂本多衣子,前田里美,笠作祐子他:吸引操作の患者への影響.ICUとCCU1985;9:730.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社