SpO2が低いときの気管吸引は、どうすればいいの?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「SpO2が低いときの気管吸引」に関するQ&Aです。

 

露木菜緒
一般社団法人Critical Care Research Institute(CCRI)

 

SpO2が低いときの気管吸引は、どうすればいいの?

 

人工呼吸器装着中ならば、気管吸引を実施する前に、人工呼吸器の100%濃度酸素を投与します。
深呼吸(サイ)モードなど、約2分間100%酸素濃度を投与するモードを活用します。

 

〈目次〉

 

人工呼吸器の「100%酸素投与モード」

気管吸引は、気道内の空気を吸引することから、低酸素血症を助長する。そのため、特にSpOが低いときは、事前に高濃度酸素を投与する。

 

各人工呼吸器が有する「100%の酸素投与を行う機能」を用いる場合、100%酸素フラッシュボタン(深呼吸[サイ]モード)を押す(図1)。

 

図1深呼吸モードによる100%酸素投与

 

手動式酸素投与の弊害

従来、肺の再拡張促進、高濃度酸素の一定時間の送り込みを目的として行っていた「気管吸引の前後にジャクソンリース回路などの手動式換気器具を用いた酸素投与(手動式リクルートメント・マヌーバー)」は、弊害のほうが大きいため、現在では推奨されない。

 

PEEPを設定している患者に対して手動式リクルートメント・マヌーバーを行うと、PEEPが解除されて肺が虚脱する(ジャクソンリース回路での再拡張時には、PEEPはかからない)。

 

不慣れな人がジャクソンリース回路を扱った場合、一定の送気量を維持できないために気道内圧がきわめて不安定となる。過剰な量のエアを送り込むことで気道内圧が異常に高くなり、血圧の低下や気胸を合併することもある。

 

気管吸引時には、安定した吸入酸素濃度送気や換気量が必要であることから、人工呼吸器の100%換気モードを活用するほうが安全である。

 

略語

 

  • PEEP(positive end expiratory pressure ventilation):呼気終末陽圧換気

[文献]

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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