1回の気管吸引の時間は?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「気管吸引の時間」に関するQ&Aです。
露木菜緒
一般社団法人Critical Care Research Institute(CCRI)
1回の気管吸引の時間は?
10秒以内にとどめましょう。できるだけ、吸引時間は短いことが望ましいです。
〈目次〉
吸引時間の目安
吸引にかける時間は、10秒以内で、短ければ短いほどよい。吸引時間が長いほど、SpO2は大きく低下して回復も遅く、気道粘膜損傷や無気肺のリスクも高まる。
FIO2(吸入気酸素濃度)が高いほど、気管吸引によるSpO2低下は著しい。FIO20.5以上の場合は、より短時間で吸引を行う(図1)。
坂本多衣子,前田里美,笠作祐子,他:吸引操作の患者への影響.ICUとCCU1985;9(6):730.より引用
吸引時間とSpO2
吸引時間の指標に「SpO2低下」を用いるのは危険である。パルスオキシメータの値が、そのときの患者の酸素飽和度をリアルタイムに反映していない場合があるためである。
特に、末梢循環不全のある患者は、中枢の酸素飽和度が低下してから1分以上遅れて、末梢の酸素飽和度が低下することがある。
吸引時間の配分
分泌物が貯留していない限り、気管チューブ内をゆっくり吸引する必要はない。低酸素血症を助長するだけである。
略語
- FIO2(fraction of inspired O2 concentration):吸入気酸素濃度
[文献]
- (1)Cereda M, Villa F, Colombo E, et al. Closed systemendotracheal suctioning maintains lung volume during volume-controlled mechanicalventilation. Intensive Care Med 2001;27:648-654.
- (2)小泉恵,門脇睦美:研究の動向と問題点.ナーシングトゥデイ1998;13:28-32.
- (3)坂本多衣子,前田里美,笠作祐子他:吸引操作の患者への影響.ICUとCCU1985;9:730.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社