TC療法(化学療法のポイント)/卵巣がん

この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、卵巣がん(卵巣癌)の患者さんに使用する抗がん剤「TC療法(パクリタキセル+カルボプラチン療法)」について、レジメンや副作用、治療成績について紹介します。

 

第2話:『TC療法(看護・ケアのポイント)/卵巣がん

TC療法(1)/卵巣がん

 

西森久和
(岡山大学病院 血液・腫瘍内科)

 

TC療法のポイントA・B・C

  • ポイントA:パクリタキセルとカルボプラチンに対するアレルギー過敏症状)に十分注意しよう!
  • ポイントB:パクリタキセルはしびれが出やすいので、注意して観察しよう!
  • ポイントC:好中球減少、血小板減少に注意しよう!

 

〈目次〉

 

TC療法は卵巣がんの患者さんに行う抗がん剤治療

TC(ティーシー)療法とは、卵巣がんの患者さんに対して行う代表的な抗がん剤治療です。

 

TC療法を行う際には、投与時のアレルギー(過敏反応)やしびれ、むくみと、1~2週間程度で起こる骨髄抑制(白血球・好中球減少に加え、血小板減少も高頻度)などが患者さんに起こっていないか、注意しましょう。

 

TC療法のポイントA

  • パクリタキセルとカルボプラチンに対するアレルギー(過敏症状)に十分注意しよう!

 

TC療法のポイントB

  • パクリタキセルはしびれが出やすいので、注意して観察しよう!

 

TC療法で使用する薬剤

TC療法で使用する薬剤は、表1のとおりです。

 

 

表1TC療法で使用する薬剤

TC療法で使用する薬剤

 

TC療法のレジメン

パクリタキセル(タキソール)とカルボプラチン(パラプラチン)は、1日目(Day 1)に投与し、2~21日目は休薬します(表2)。

 

 

表2TC療法のレジメン

TC療法のレジメン

 

TC療法で使用する薬剤の投与方法(表3

 

表3TC療法の投与方法

TC療法の投与方法

 

生食=生理食塩水

 

*本投与方法は、岡山大学病院で行われているものです(2017年5月現在)。

 

上記を1コースとして、1コース投与後は3週間ごとに同様のものを投与し、これを6~9サイクル繰り返します。つまり、2コース目は、22日目から始まります。

 

memoカルボプラチン使用時に目にする「AUC」とは?

AUCとは、血中濃度曲線下面積、または薬物血中濃度-時間曲線下面積(Area Under the blood concentration time Curve)の略称で、利用できる薬の総量を表している指数です。

 

カルボプラチンの効果と副作用(特に血小板減少)を見る際には、体表面積あたりで計算する投与量よりも、AUCに相互関係があることが知られています。

 

覚えて欲しいポイントとは、AUCの値は腎機能によって大きく影響されるので、患者さんの腎機能の程度によって薬剤の投与量を調節する必要があります。その際の計算方法としてAUCが使用されるという点です。

 

TC療法の代表的な副作用

TC療法の代表的な副作用は、嘔気や嘔吐、むくみ、筋肉痛、関節痛、骨髄抑制(特に、白血球・血小板減少)、発熱性好中球減少症(FN)、末梢神経障害、脱毛などがあります。

 

急に起こる副作用は、アレルギー反応、嘔気、嘔吐、などです。

 

特に、アレルギー反応が強く出ると生命に関わる可能性もあるため、十分な観察と、アレルギー反応が出たときの対応を素早くとることが重要です。

 

1~2コース目では、パクリタキセル(タキソール)によるアレルギーが、3コース目以降、コースを重ねるにつれて、カルボプラチン(パラプラチン)によるアレルギーが出現しやすくなりますので、治療を通じて注意が必要です。

 

遅れて起こる副作用は、筋肉痛・関節痛(投与2~3日後)、むくみ、骨髄抑制、末梢神経障害、脱毛などです。

 

TC療法のポイントC

  • 副作用の好中球減少、血小板減少に注意しよう!

 

アレルギー反応時の対応(岡山大学病院腫瘍センター)

患者さんにアレルギー反応が見られれば、図1の手順で治療を行います。

 

図1アナフィラキシー(成人)の治療手順

アナフィラキシー(成人)の治療手順

 

アナフィラキシー発現時に慌てず適切に対応できるよう、図の手順を十分理解しておきましょう。

 

(重篤副作用疾患別マニュアル アナフィラキシー. 厚生労働省. 2008. を参考に作成)

 

また、岡山大学病院腫瘍センターでは、アレルギー反応に注意が必要な患者さんの点滴棒には、「注意マーク」を掲げて、スタッフ全員でアレルギー反応のリスクを共有しています(図2)。

 

図2点滴棒に掲げられた「注意マーク」

点滴棒に掲げられた「注意マーク」

 

この「注意マーク」があることで、スタッフが意識し、よりきめ細かく患者さんの状態を確認できます。

 

TC療法の治療成績

TC療法の治療によって腫瘍縮小する患者さんの割合は、64%と非常に効果の高いものです。効果が持続する期間もおよそ1年4か月、生存期間の平均(中央値)も約2年半と長期にわたります。

 

[関連記事]
  • 第2話:『TC療法(看護・ケアのポイント)/卵巣がん』
  • ⇒『抗がん剤 A・B・C』の【総目次】を見る

 


 


[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授

 

[編集・執筆]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科

 


*本連載では、薬剤の厳密な指示・副作用・投与スケジュールなどについて記載されていますが、これらは2017年5月時点のもので、変更される可能性がございます。薬剤の使用にあたっては、製品に添付されている最新の情報を十分にご参照ください。

 

*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。

 

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