FOLFIRINOX療法(化学療法のポイント)/膵がん
この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、膵がん(膵癌)の患者さんに使用する抗がん剤「FOLFIRINOX療法」について、レジメンや副作用、治療成績について紹介します。
第2話:『FOLFIRINOX療法(看護・ケアのポイント)/膵がん』
堀口 繁
(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学)
- ポイントA:本レジメンは膵がんの治療ガイドラインの中で、手術ができない膵がん患者さんに強く推奨されている治療のうちの一つです。
- ポイントB:46時間、フルオロウラシルの持続静注を行うので、投与開始前にCVポート(点滴のための器具)を外科的に挿入しておく必要があります。
- ポイントC:食欲低下や嘔気などの症状の程度を把握して、次コース以降の制吐剤の変更をチームで検討しましょう。
〈目次〉
- FOLFIRINOX療法は膵がんの患者さんに行う抗がん剤治療
- FOLFIRINOX療法で使用する薬剤
- FOLFIRINOX療法のレジメン
- FOLFIRINOX療法で使用する薬剤の投与方法
- FOLFIRINOX療法の代表的な副作用
- FOLFIRINOX療法の治療成績
FOLFIRINOX療法は膵がんの患者さんに行う抗がん剤治療
FOLFIRINOX(フォルフィリノックス)療法とは、2013年にわが国で承認された膵がん患者さんに対する抗がん剤治療です。この治療は、「ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法」と並んで、手術ができない膵がん患者さんに対して強く勧められている治療法です。
投与開始初日は腹痛や下痢、4~5日間は食欲低下や嘔気、1週間経過した頃には高度の下痢、2週間経過した頃には好中球減少と、時期によって出現する症状が異なるので注意しましょう。
FOLFIRINOX療法のポイントA
- FOLFIRINOX療法は、膵がんの治療ガイドラインの中で、手術ができない膵がん患者さんに強く推奨されている治療のうちの一つです。
FOLFIRINOX療法で使用する薬剤
FOLFIRINOX療法で使用する薬剤は、表1のとおりです。
表1FOLFIRINOX療法で使用する薬剤
FOLFIRINOX療法のレジメン
1日目(Day 1)に、レボホリナート(アイソボリン)、イリノテカン(カンプト)、オキサリプラチン(エルプラット)、フルオロウラシル(5-FU:急速静注・持続静注)を投与します。2、3日目は、フルオロウラシル(5-FU:持続静注)を投与します。4~14日目は休薬します。(表2)。
表2FOLFIRINOX療法のレジメン
FOLFIRINOX療法のポイントB
- 46時間、フルオロウラシルの持続静注を行うので、投与開始前にCVポート(点滴のための器具)を外科的に挿入しておく必要があります。
FOLFIRINOX療法で使用する薬剤の投与方法(表3)
表3FOLFIRINOX療法の投与方法
FOLFIRINOX療法の代表的な副作用
投与当日には腹痛と下痢、舌先のしびれが起きることがあります。特に、腹痛や急性の下痢はコリン作動性症候群と呼ばれます。
投与翌日から吃逆(きつぎゃく:しゃっくり)が数日、また嘔気、食欲不振、倦怠感が1週間程度続くことがあります。1週間経過した頃に下痢が、10日目頃から好中球減少が起こります。
投与を繰り返すと、末梢神経障害や味覚異常、時にアレルギーを起こすことがあります。
FOLFIRINOX療法のポイントC
- 食欲低下や嘔気などの症状の程度を把握して、次コース以降の制吐剤の変更をチームで検討しましょう。
FOLFIRINOX療法の治療成績
転移のある切除不能膵がんに対する海外の臨床試験では、病変が小さくなる割合32%、現状維持の割合39%と、過半数の患者さんに有効でした。今までの標準治療のゲムシタビン(ジェムザール)に比べて余命を延ばす効果も強い結果でした(約11か月 対 約7か月)1)。
同様の患者さんを対象にした国内の臨床試験でも、病変が小さくなる割合39%、現状維持の割合31%、と多くの患者さんに有効でした2)。
- 第2話:『FOLFIRINOX療法(看護・ケアのポイント)/膵がん』
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[文 献]
- (1)Thierry C, Francoise D, Marc Y, et al. FOLFIRINOX versus gemcitabine for metastatic pancreatic cancer. N Engl J Med 2011; 364: 1817-25. (2017/5/16アクセス)
- (2)Takuji O, Masafumi I, Akira F, et al. Phase II study of FOLFIRINOX for chemotherapy-naïve Japanese patients with metastatic pancreatic cancer. Cancer Sci 2014; 105: 1321-6. (2017/5/16アクセス)
[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授
[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科
[執 筆]
堀口 繁
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学
*本連載では、薬剤の厳密な指示・副作用・投与スケジュールなどについて記載されていますが、これらは2017年5月時点のもので、変更される可能性がございます。薬剤の使用にあたっては、製品に添付されている最新の情報を十分にご参照ください。
*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。