パクリタキセル+ラムシルマブ療法(化学療法のポイント)/胃がん

この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、がん(胃癌)の患者さんに使用する抗がん剤「パクリタキセル+ラムシルマブ療法」について、レジメンや副作用、治療成績について紹介します。

 

第2話:『パクリタキセル+ラムシルマブ療法(看護・ケアのポイント)/胃がん』

パクリタキセル+ラムシルマブ療法

 

神崎洋光
(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学)

 

パクリタキセル+ラムシルマブ療法のポイントA・B・C

  • ポイントA:投与中のアレルギー反応に注意! アルコール過敏症の患者さんには使用できません。
  • ポイントB:長期使用により脱毛、末梢神経障害が起こりやすいです。
  • ポイントC:ラムシルマブによる重篤な有害事象の発生に注意!

 

〈目次〉

 

パクリタキセル+ラムシルマブ療法は胃がんの患者さんに行う抗がん剤治療

パクリタキセル+ラムシルマブ療法は、切除不能な胃がんの患者さんに対して行うセカンドライン(二次治療)の抗がん剤治療です。パクリタキセル(タキソール)とラムシルマブ(サイラムザ)は、いずれも点滴の薬剤です。パクリタキセル(タキソール)には添加物としてアルコールが入っているため、アルコール過敏症の患者さんには注意しましょう。

 

ラムシルマブ(サイラムザ)は、ヒト血管内皮細胞増殖因子受容体-2(VEGFR-2)に対する抗体で、血管新生を阻害する効果があります。この薬剤の投与によって、がん細胞へ栄養や酸素が送られる血管が減少し、兵糧攻めをするように抗腫瘍効果をもたらします。

 

パクリタキセル+ラムシルマブ療法のポイントA

  • 投与中のアレルギー反応に注意! アルコール過敏症の患者さんには使用できません。

 

パクリタキセル+ラムシルマブ療法で使用する薬剤

パクリタキセル+ラムシルマブ療法で使用する薬剤は、表1のとおりです。

 

 

表1パクリタキセル+ラムシルマブ療法で使用する薬剤

パクリタキセル+ラムシルマブ療法で使用する薬剤

 

(写真提供:日本イーライリリー株式会社)

 

パクリタキセル+ラムシルマブ療法のレジメン

パクリタキセル(タキソール)は、1、8、15日目(Day1、8、15)に投与し、16~28日目は休薬します。ラムシルマブ(サイラムザ)は、1、15日目に投与し、16~28日目は休薬します(表2)。

 

 

表2パクリタキセル+ラムシルマブ療法のレジメン

パクリタキセル+ラムシルマブ療法のレジメン

 

パクリタキセル+ラムシルマブ療法で使用する薬剤の投与方法(表3

 

表3パクリタキセル+ラムシルマブ療法の投与方法

パクリタキセル+ラムシルマブ療法の投与方法

 

生食:生理食塩水

 

*本投与方法は、岡山大学病院で行われているものです(2017年5月現在)。

 

パクリタキセル+ラムシルマブ療法の代表的な副作用

パクリタキセル+ラムシルマブ療法の代表的な副作用には、一般的な抗がん剤の副作用である骨髄抑制や嘔気・嘔吐などの消化器症状があります。また、特徴的な副作用として、アレルギー反応やパクリタキセル(タキソール)に添付されているアルコールによる過敏反応、末梢神経障害、脱毛、点滴投与時の血管痛、関節痛・筋痛、蛋白尿、高血圧、消化管穿孔、血栓症出血などがあります。

 

急に起こる副作用は、アレルギー反応や嘔気・嘔吐、点滴投与時の血管痛などがあります。

 

遅れて出てくる副作用には、骨髄抑制、末梢神経障害、脱毛、高血圧、蛋白尿などがあります。

 

長期間治療を継続することで脱毛や末梢神経障害が生じることが多いため、患者さんに事前に説明しておくことが大切です。まれですが、ラムシルマブ(サイラムザ)は消化管穿孔や出血、血栓症といった重篤な副作用が生じる可能性があります。患者さんには、変化があれば速やかに受診するように説明しておきましょう。

 

パクリタキセル+ラムシルマブ療法のポイントB

  • 長期使用により脱毛、末梢神経障害が起こりやすいです。

 

パクリタキセル+ラムシルマブ療法のポイントC

  • ラムシルマブによる重篤な有害事象の発生に注意!

 

パクリタキセル+ラムシルマブ療法の治療成績

切除不能な胃がんに対する抗がん剤治療は治癒することは難しく、延命的な治療です。

 

この療法を受ける多くの患者さんはファーストライン(初回化学療法)の治療を受けた方ですが、腫瘍の進行を止める可能性は80%、縮小する可能性は約30%で、生存期間中央値は約10カ月です。

 

[関連記事]
  • 第2話:『パクリタキセル+ラムシルマブ療法(看護・ケアのポイント)/胃がん』
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[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授

 

[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科

 

[執 筆]
神崎洋光
岡山大学大学院医薬学総合研究科消化器・肝臓内科学

 


*本連載では、薬剤の厳密な指示・副作用・投与スケジュールなどについて記載されていますが、これらは2017年5月時点のもので、変更される可能性がございます。薬剤の使用にあたっては、製品に添付されている最新の情報を十分にご参照ください。

 

*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。

 

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