異なる血液型を輸血してはいけないのはなぜ?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は輸血の注意点について説明します。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
異なる血液型を輸血してはいけないのはなぜ?
輸血できる血液型は、本人の血液型と同じ血液型か、輸血しても異常反応が現れない血液型にかぎられます。
たとえば、同一血液型の血液が得られない緊急時には、A型、B型の場合、О型の血液を輸血することが可能です。また、AB型の人は、すべての血液型の血液を輸血することができます。しかしО型の場合は、О型の血液しか輸血を受けられません。これは、なぜなのでしょう。
ABO式の血液型はA型、B型という2つの抗原によって分類されていると、「血液型にはどんな種類があるの?」で記しました。この抗原は凝集原(ぎょうしゅうげん)ともいい、凝集する性質をもっています。
一方、血清のなかには、凝集原を凝集させる物質が含まれています。これを凝集素(ぎょうしゅうそ、抗体)といいます。
A型の血清には、B型の凝集原と反応して血球を凝集させる凝集素があり、これを抗B(β)凝集素といいます。同様に、B型の血清にはA型の凝集原と反応して血球を凝集させる凝集素があり、これを抗A(α)凝集素といいます。О型には両方の凝集素があり、AB型にはどちらもありません。
A型の血液をB型の人に輸血したと想定してみましょう。B型の人の血清中には抗A(α)凝集素がありますので、A型の凝集原と反応して血球が凝集してしまいます。同様に、輸血したA型の血液の血清中には抗B(β)凝集素がありますので、B型の凝集原と反応して血球が凝集してしまいます。すなわち、2つの方向から血液を凝集させてしまうのです。
AB型の人にすべての血液型の血液を輸血できるのは、凝集素が全くないからです。О型の人にほかの血液型の血液を輸血できないのは、A型とB型の双方の凝集素を持っているためです(表1)。
表1ABO式血液型と輸血(◯は輸血可能、×は輸血不可)
Rh(−)型への輸血の注意点
Rh(-)の人にRh(+)の血液を輸血してしまうと、どうなるでしょう。
Rh(-)の人は、もともとRh因子をもっていませんので、輸血された血液のRh因子を抗原とした抗Rh凝集素という抗体がつくられます。輸血が1回ですめば何の問題も起きないのですが、もう一度輸血しなければならないとき、問題になります。Rh(-)の人にRh(+)の血液を再輸血すると、ただちに血球の凝集や溶血などの反応が現れ、命にかかわるからです。
こうした反応は、輸血だけでなく妊娠時にも現れることがあります。たとえば、男性がRh(+)で、女性がRh(-)という組み合わせで妊娠が成立すると、胎児がRh(+)の血液型になることがあります。分娩時、胎児のRh(+)の血液が母親にも流れ込むことがあり、この時、母体内では抗Rh凝集素(抗体)がつくられます。
1回目の妊娠ではつくられる抗Rh凝集素が少ないので、胎児に移行する心配はありません。しかし、2回目の妊娠では母体内の抗Rh凝集素が胎児に移行し、胎児内でRh因子と結びついて赤血球の溶血を引き起こします。その結果、重症新生児黄疸、全身浮腫などをまねくことがあります。
現在では、1回目の出産の後に抗Rhの抗体である免疫グロブリンを注射することで、こうした発症を防ぐことができます。
※編集部注※
当記事は、2019年2月25日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
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[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック 第2版』 (監修)山田幸宏/2023年8月刊行/ サイオ出版