血腫腔ドレーン(慢性硬膜下血腫) | ドレーン・カテーテル・チューブ管理
『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は血腫腔ドレーン(慢性硬膜下血腫)について説明します。
藤巻高光
埼玉医科大学医学部脳神経外科教授
大内道晴
埼玉医科大学国際医療センター看護部(CICU)看護師長
〈目次〉
血腫腔ドレーン(慢性硬膜下血腫)の適応と目的
慢性硬膜下血腫は、硬膜と脳表との間に徐々に血液混じりの液体が貯留して、脳を圧迫し症状を呈する病態である。数週間〜数か月前に軽微な頭部外傷の既往があることが多いが、既往のはっきりしないことも少なくない。
硬膜下血腫は、硬膜の下に被膜に覆われて存在する。血腫はさらっとした液体のことが多いが、かなり粘稠な液体のこともある。
手術は、穿頭術により硬膜を切開し、血腫を流出させ、また場合により術中に血腫を洗浄するが、術中処置のみでは血腫は十分に流出しない。残存血腫の流出を図り、圧迫されている脳がもとの位置に戻ってくることを促すために、術中ドレーンを留置し、術後流出させる。
血腫腔ドレーンに用いる器材
ドレーンは、既製品(同素材)の脳室管またはやや太めの脳室管、排液バッグが用いられる。
ドレナージ回路は用いず、直接排液バッグに接続される。硬膜外ドレーンと似た状態となる。
抜去のめやす
通常、術翌日または翌々日に抜去される。CTなどで血腫内容が十分に流出したと判断された場合に抜去される。
まだ血腫の残存があり、かつドレーンの流出が不十分となってきた場合、ドレーンを数cm引き抜き、さらに半日から1日程度血腫内容の流出を促してから抜去することもある。
ケアのポイント(血膜腔ドレーン)
1固定
固定時の注意点は、脳室ドレーン、硬膜外ドレーンと同様である。
排液バッグの設置方法は、硬膜外ドレーンと同様、通常ベッド上あるいはベッド直下に置かれることが多い。
2ドレーン挿入中の観察・異常の対処
流出量、性状の観察が重要である。
通常、50〜60mL/日程度の流出量である。
「暗赤色」あるいは若干「キサントクロミー(黄色調)」を帯びた血腫内容液、および血腫を洗浄した場合は洗浄液(本来無色透明)が混じったものが流出してくる。
血腫の被膜が完成していない場合など、流出液の主体が髄液となることがある。
ドレーン抜去までに排液バッグが充満するほどは流出しないことが多いが、もし充満した場合は、脳室ドレーンと同様、無菌操作に十分に気をつけて排液バッグの交換を行う必要がある。
ドレーンは血腫内腔に挿入されているが、血腫は被膜に取り囲まれているとはいえ、その被膜自体は丈夫なものではない。薄い被膜1枚を隔ててドレーンは脳と接しているため、硬膜外ドレーンとは異なり、流出不良時にしごく(ミルキング)操作は医師の指示がない場合は行わないほうがよい。
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2015照林社
[出典] 『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド第一版』 (編著)窪田敬一/2015年7月刊行/ 株式会社照林社