硬膜外ドレーン/皮下ドレーン | ドレーン・カテーテル・チューブ管理

ドレーンカテーテル・チューブ管理完全ガイド』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は硬膜外ドレーンについて説明します。

 

藤巻高光
埼玉医科大学医学部脳神経外科教授
大内道晴
埼玉医科大学国際医療センター看護部(CICU)看護師長

 

〈目次〉

 

硬膜外ドレーンの適応と目的

硬膜外ドレーンは開頭術の術後、頭蓋骨の開頭部(骨をいったん切り取った部分)と硬膜の間に挿入され、硬膜の表面や骨の断端、皮下の筋肉、皮下組織からにじみ出る血液が貯留してを圧迫するのを防ぐことを目的とする。

 

脳室ドレーンや脳槽ドレーンと異なり、本来髄液の流出を目的とするものではない。

 

開頭術の術後、あるいは頭蓋形成術の術後に設置されることが多い。

 

硬膜外ドレーンに用いる器材

脳室管よりも太い硬めのチューブが硬膜外ドレーンとして用いられ、その先端は排液バッグに直接接続される。陰圧の排液バッグが用いられることもある。

 

脳室ドレーンのようなドレナージ回路が用いられることはない。

 

抜去のめやす

通常、術翌日に抜去される。ときに48時間程度留置されることもある。

 

流出が自然に少なくなり、あるいは血性の流出液が透明になってくれば抜去可能である。

 

本来、硬膜は、水が漏れないように縫合されるが、わずかの髄液の漏れは起こりうるため、いつまでも硬膜外ドレーンを留置すると、硬膜の水漏れ部の修復が遅くなり、縫合不全から髄液の皮下貯留につながる。必要以上に長期に留置すべきではない。

 

ケアのポイント(硬膜外ドレーン)

1固定

脳室ドレーンと同様であるが、髄液を扱うドレーンにくらべ、管の長さが短い。ループを作る余裕がないことが多い。

 

脳室ドレーンにくらべて丈夫なドレーンが用いられるので、頭皮への固定もより確実にされていることが多い。

 

排液バッグは頭蓋内の血液や滲出液を弱い陰圧で吸引することを目的として、ベッド上あるいはベッドより少し低く置かれることが多い(図1)。

 

図1排液バッグの位置

排液バッグの位置

 

 

2ドレーン挿入中の観察・異常の対処

ドレーンの流出液は当初「血性」で、徐々に量が減少するとともに血性も徐々に薄くなる。

 

血性の排液が、流出量が減少せず続く場合は注意する。出血傾向が生じていたり、硬膜や皮下の血管に対する止血が不完全で再出血している可能性を考える必要がある。

 

いままである程度流出があったものが急になくなる場合は、凝血塊がドレーンをふさいでいる可能性がある。

 

流出液に異常がみられる場合、いずれにしても頭蓋内(硬膜外)に血腫を形成している危険があり、患者の意識状態、神経症状を詳細に観察する必要がある。これらにわずかでも異常が認められた場合は、医師に報告し、早期にCTスキャンなどの検査を行う。

 

凝血などが詰まりやすいドレーンであり、(医師より特に禁止されていない場合には)適宜ドレーンをしごいて流出を促すようにする。現在使われている素材であれば切断の可能性はあまりないが、引きちぎることのないように十分に注意する。

 

通常の流出量であれば、ドレーンが抜去されるまで排液バッグを交換する必要はない。

 

(参考)脳神経外科領域の皮下ドレーン

脳神経外科領域では、皮下ドレーンが留置されることはあまり多くない。特殊な開頭術で皮下の出血が多い場合や、感染が疑われる場合などに用いられることがある。

 

頭蓋形成術では、形成する人工骨に多くの穴が空いている場合、あるいはチタンメッシュが用いられる場合など、硬膜と骨との間の出血も皮下に漏れるので、硬膜外ドレーンを留置せずに皮下ドレーンを留置して、滲出液やわずかな出血を排除する場合もある。

 

基本的な管理は、硬膜外ドレーンとほぼ同様と考えてよい。

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2015照林社

 

[出典] 『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド第一版』 (編著)窪田敬一/2015年7月刊行/ 株式会社照林社

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