FASTのエコー像(ダグラス窩)
画像検査のなかでも、エコー(超音波)検査は、侵襲度が低く、簡便に行える検査です。
外来や病棟で、看護師が目にすることの多いエコー検査について、コツやポイントを消化器内科医が解説します。
[前回の内容]
今回は、「FASTのエコー像(ダグラス窩)」についてのお話です。
加藤真吾
(横浜市立大学附属病院がんゲノム診断科)
いよいよ、FASTで調べるべき場所の最後の解説です。
ここでは、ダグラス窩についてです。
交通事故などで、外傷がある患者さんには、色々な場所をエコーで診るんですね。
私もFASTに立ち会う時には、流れを間違えないように、しっかりと覚えておきます。
エコーを当てる場所は多いですが、一刻を争うこともあるので、スムーズに進めるのがポイントです。
緊急時に、しっかりサポートできるように知識を備えてくれたら助かりますね。
〈目次〉
FASTのエコー像(ダグラス窩)
ここでは、ダグラス窩のエコー像を紹介します(図1)。FASTは、患者さんに外傷がある場合に出血の有無を確認するためのエコー検査で、外傷患者さんに必須の検査です。患者さんの命にかかわることもあるので、注意してください。
図1ダグラス窩のエコー検査を行う際にプローブを当てる位置
ダグラス窩に行うFAST
ダグラス窩は、子宮と直腸の間の辺りです。正確に言うと、子宮は女性にしかないため、ダグラス窩は女性にしかありません。しかし、男性の場合でも、同じ位置を膀胱直腸窩とも言い、便宜上、ダグラス窩と呼んでいます。FASTでは、ここに液体が溜まっている(貯留)かどうかを確認します。
図2は、ダグラス窩に液体が溜まっていない患者さんのエコー像です。膀胱の形がはっきりと見えます。
図2ダグラス窩に液体がないエコー像
図3は、ダグラス窩に液体が溜まっている患者さんのエコー像です。膀胱の下に液体が溜まっているのが見えます。
図3ダグラス窩に液体があるエコー像
ダグラス窩に液体が見られる場合、非常に危険な状態になっている可能性があります。モリソン窩や脾臓周囲に液体の貯留が見られた場合と同様に、緊急止血術が必要になります。
* * *
エコー検査の準備や、申し送り時のポイント、記録記入時のポイントは、『FASTのエコー像(心嚢腔)』と同様です。そちらの解説を参考にしてください。
Check Point
- FASTでは、ダグラス窩に腹水があるかを探しています。FAST陽性の場合は緊急の処置が行われます。
- ダグラス窩は、ヒトが仰向けに寝た場合、最も低い位置になります。また、この部位には、周囲に圧迫されるものがないため、出血しても自然には止まりません。
- ダグラス窩で出血が見られた場合は、緊急止血術が必要になります。
これで、FASTで診る代表的なエコー像の解説は終了です。
FASTは、外傷患者さんにとってとても重要な検査なので、是非、サポートできる力を身につけてください。
- FASTで外傷患者の緊急処置の必要性を判断
- FASTのエコー像(心嚢腔)
- FASTのエコー像(右胸腔、左胸腔)
- FASTのエコー像(モリソン窩)
- FASTのエコー像(脾臓周囲)
- ⇒『初めてのエコー(超音波)検査』の【総目次】を見る
[執筆者]
加藤真吾
横浜市立大学附属病院がんゲノム診断科
Illustration:田中博志