アラームの原因と対処方法は?|人工呼吸器の使い方
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『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「人工呼吸器のアラーム」に関するQ&Aです。
野口裕幸
CE野口企画代表
アラームの原因と対処方法は?
アラームは、患者の状態や人工呼吸器自体の異常によって発生します。アラーム発生時には、周囲に配慮しながら迅速に対処しなければなりません。
〈目次〉
人工呼吸器のアラームの種類
人工呼吸器のアラームは、救命的アラームと合併症予防アラームとに大別できる(9)。
その他、人工呼吸器本体の異常や故障、加温加湿器のアラームがある(表1)。
人工呼吸器のアラームの原因
アラームの原因は、①換気維持ができない、②患者に何らかの現象が生じた、③人工呼吸器やその周辺機器の異常に分類される。
1「換気維持ができない」場合
換気維持ができない原因として、以下の2つが挙げられる。
- ①回路外れや呼吸回路などからのガス漏れ(リーク)、回路や気管チューブの折れ曲がり、人工鼻や気管チューブの閉塞など呼吸回路系の異常
- ②無呼吸、あるいはファイティングやバッキングなどによるガス送気の停止など
いずれの場合も、低換気に陥り換気が維持できず、アラームが発生する。
2「患者に何らかの現象が生じた」場合
無呼吸や頻呼吸、あるいは低換気量、換気量増加などが挙げられる。
3「人工呼吸器やその周辺機器の異常」の場合
人工呼吸器やその周辺機器の異常として、医療ガス供給不足や停電など、なんらかの異常による人工呼吸器の停止、加温加湿器のトラブル、呼気二酸化炭素モニタなど付属しているモニタの異常などが挙げられる。
人工呼吸器のアラーム対処のポイント
- アラーム発生時は迅速に対処する。
- 自分1人ではアラーム対応が難しいと判断した場合は、すみやかに応援を要請する。
- アラームが発生したときは、まず、アラーム音を消し、アラーム表示を確認する。アラーム音を消しても異常状態から回復していない場合は、2〜3分後に再度鳴動する。
- 装置異常状態の場合は、すみやかに使用中の人工呼吸器を患者から外し、手動式蘇生器に切替え、予備の装置を準備し変更する。
- 原因究明に時間を要する場合にも、手動式蘇生器に変更して換気の維持に努める。人工呼吸器の交換が必要な場合もある。
- アラーム音は、患者を不安にさせる。特に、アラームが発生している機器を装着している患者のみならず、周囲の患者も不安にさせてしまうことを常に念頭に置いて対応する。
Columnバッキングとファイティングって?
ファイティングとは、患者の自発呼吸と、人工呼吸器による補助・強制換気が合わない(=同調しない)ことをいい、人工 呼吸器の設定変更を考慮することが必要となる。チューブの位置や、気道内の分泌物がファイティングの原因となることもあるため、原因を適切にアセスメントすることも重要である。
バッキングとは、背を曲げるほど大きく咳き込んだ状態のことをいい、気管チューブ自体の刺激や、気管吸引による刺激、ファイティング(人工呼吸器と呼吸のリズムと合わない)などにより、患者の咳嗽反射が誘発されて生じる。バッキング発生時には、気道内圧が高くなり、危険である。
なお、接続部・回路を確実に接続しないと、ファイティングやバッキングなどでも容易に外れてしまうため注意する。Yピースと気管チューブを接続するときは「チューブを回転させながら入れ込む」のが基本であることを忘れない。
[Profile]
道又元裕
杏林大学医学部付属病院看護部長
[文献]
- (1)Balas MC, Vasilevskis EE, Olsen KM, et al. Effectiveness and safety of the awakening and breathing coordination, delirium monitoring/ management, and early exercise/mobility bundle. Crit Care Med 2014; 42: 1024-1036.
- (2)International consensus conferences in intensive care medicine: ventilator-associated lung injury in ARDS. Am J Respir Crit Care Med 1999; 160: 2118– 2124.
- (3)Aboab J, Louis B, Jonson B, et al. Relation between PaO2/FIO2 ratio and FIO2: a mathematical description. Intensive Care Med 2006; 32: 1494–1497.
- (4)El-Khatib MF, Bou-Khalil P. Clinical review: liberation from mechanical ventilation. Crit Care 2008; 12: 221.
- (5)Thille AW, Rodriguez P, Cabello B, et al. Patient– ventilator asynchrony during assisted mechanical ventilation. Intensive Care Med 2006; 32: 1515–1522.
- (6)Nemer SN, Barbas CS, Caldeira JB, et al. A new integrative weaning index of discontinuation from mechanical ventilation. Crit Care 2009; 13: R152.
- (7)Tobin MJ, Jubran A, Laghi F. Patient-ventilator interaction. Am J Respir Crit Care Med 2001; 163: 1059–1063.
- (8)Fan E, Needham DM, Stewart TE. Ventilatory management of acute lung injury and acute respiratory distress syndrome. JAMA 2005; 294: 2889–2896.
- (9)Checkley W, Brower R, Korpak A, et al. Effects of a clinical trial on mechanical ventilation practices in patients with acute lung injury. Am J Respir Crit Care Med 2008; 177: 1215-1222.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社