設定値と実測値に差が出る原因は?|人工呼吸器の使い方
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「設定値と実測値の誤差」に関するQ&Aです。
野口裕幸
CE野口企画代表
人工呼吸器の設定値と実測値に差が出る原因は?
患者が原因となる場合や、人工呼吸器や呼吸回路が原因となる場合など、さまざまな要因が考えられますが、整備不良の場合もあります。
〈目次〉
人工呼吸器における設定値
人工呼吸器の設定のなかで、測定している項目は、呼吸回数、呼気一回換気量、酸素濃度である。
加温加湿器を使用している場合は、回路内およびチャンバー出口の温度を測定している。
人工呼吸器の設定値と実測値の差が示すこと
1呼吸回数
一般的に、2呼吸間の時間より算出した呼吸回数を表示している場合が多い。そのため、呼吸が止まっているのに回数が表示されていることもある。
2一回換気量
設定一回換気量に対して常に少ない場合は、呼吸回路やカフからのガス漏れ(リーク)の可能性が高い。
設定一回換気量に対して実測値が数呼吸少ない状況が続いた後、実測値が多くなる場合がある。実測値が少ないときは、患者の肺の中にガスが残っている状況(エアトラッピング)であり、溜まったガスが数呼吸後にまとめて呼出されるため、実測値が設定値に対して多くなる。
3酸素濃度
設定酸素濃度に対する誤差が生じるのは、多くの場合、酸素濃度計の交換時期である。使用状況にもよるが、おおむね1年ごとに交換が必要となる。
酸素・空気の供給異常や、アウトレットとの接続不良でも、設定酸素濃度に対する誤差が生じる。
4回路内およびチャンバー出口の温度
加温加湿器の設定と実測値との差は、多くの場合、回路内結露によって生じる。
回路内を流れるガスの温度は、Yピース部付近の温度センサーによって測定されている。温度センサーに水滴が付着すると、温度が低くなることが多い。
結露付着による温度低下が生じると、加温加湿器は「温度が下がった」と認識し、チャンバーを温めて水温を上げる。そのため、患者に異常に高い温度のガスが供給されることがあるため、注意が必要である。
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本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社