人工呼吸器のグラフィックの見方は?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「グラフィックの見方」に関するQ&Aです。
野口裕幸
CE野口企画代表
人工呼吸器のグラフィックの見方は?
グラフィックの波形からは、患者の病態と、人工呼吸器の設定に関する異常の有無が読み取れます。波形の種類によって得られる情報は異なります。
〈目次〉
人工呼吸器のグラフィック
- 人工呼吸器のグラフィックは、吸気・呼気により発生する患者情報で、気道内圧や吸気流量の変化、1回換気量の推移をリアルタイムで可視化したものである。
- グラフィックは、自発呼吸と人工呼吸器の同調性の確認や、設定・治療効果の判断、メカニクスの評価などに用いる。
- グラフィックを見ることは、異常の早期発見にもつながる。
グラフィックの基本波形
- グラフィック波形には、5つの基本波形がある。時間軸に対する圧(pressure)、フロー(flow)、換気量(volume)を示した波形が3つ、ループ波形といわれる波形(圧−換気量曲線、流量−換気量曲線)が2つである。
- 横軸が時間軸のものは「時間ごとの変化」を観察するために用いる。一方、ループ波形は「一呼吸ごとの状態」を確認することができる。
各波形の見方
1気道内圧波形
- 気道内圧波形は、「時間軸に対する圧」を示す波形である。
- 気道内圧波形では、気道抵抗・コンプライアンスの変化をとらえることができる。また気道・肺のメカニクス測定も行うことができる(図2-A)。
- 従量式の設定で、図2-Bのような波形が見られる場合、吸気流量不足が考えられる。この波形が見られた場合、患者の呼吸仕事量増加が考えられるため、人工呼吸器の設定変更が必要となる。
(A)気道内圧波形で見るべきポイント
(B)吸気流量不足(VCVの場合)
2吸気流量波形
- 吸気流量波形は、「時間軸に対するフロー」を示す波形である。
- 吸気流量波形を見るときは、呼気流量の時間と呼気ガスの呼出終了時に「0」に戻っていることを確認することが重要である(図3-A)。
- 呼気時間の延長が見られる場合は、気道抵抗の上昇が示唆される(図3-B)。
- 呼出が終了する前に次の吸気が始まる場合は、エアトラッピングによるauto-PEEPを考える。auto-PEEPは、頻呼吸時や気道抵抗上昇時に見られることがある(図3-C)。
- 強制換気を圧規定で行う場合、吸気波形が「0」になるように吸気時間を設定するべきである(図3-D)。
吸気流量波形で見るべきポイント
(D)吸気時間による波形の違い(強制換気を圧規定で行う場合)
3換気量波形
- 換気量波形は、「時間軸に対する換気量」を示す波形である。
- 換気量波形を見るときは、呼気が「0」になることを確認することが重要である。
- 呼気が常に「0」にならない場合には、呼吸回路やカフなどからの漏れ(リーク)を確認すべきである。
- 呼気が数呼吸「0」に戻らない波形の後、「0」以下になる場合には、エアトラッピングが生じている可能性があるので、気道の確認が必要である。
4圧−換気量波形
- 圧−換気量曲線は、横軸に圧、縦軸に量をとり、プレッシャーサポートや機械換気など陽圧換気では左回り(反時計回り)に描かれる。
- 自発呼吸のときは、時計回りに描かれる。
- 吸気開始点と圧−換気量の最高点を結んだ直線の傾きにより肺の膨らみやすさ(コンプライアンス)を知ることができる。
- 傾きが低い(横軸側)に傾くとコンプライアンス低下を示し、傾きが高くなるとコンプライアンスの改善を示唆する。
5流量−換気量曲線
- 流量−換気量曲線は、横軸に量、縦軸にフローをとる。上側が吸気、下側が呼気を示して描く。正常では必ずクローズループとなるが、回路内リークが生じると、流量−換気量曲線はクローズしない。
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本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社