人工呼吸器のトラブルには、 どんなものがあるの?|人工呼吸器の使い方

 

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「人工呼吸器のトラブル」に関するQ&Aです。

 

春田良雄
公立陶生病院臨床工学部技師長

 

人工呼吸器のトラブルには、どんなものがあるの?

 

人工呼吸器本体のトラブル、回路のトラブル、患者側のトラブルに分けられます。トラブルが発生すると、アラームが鳴ります。

 

〈目次〉

 

起こりうるトラブル

1人工呼吸器本体のトラブル

人工呼吸器本体のトラブルには、人工呼吸器本体の故障、供給される医療ガスの供給ガス圧低下、電源異常がある。

 

図1人工呼吸器トラブル事例

人工呼吸器トラブル事例

 

全日本国立医療労働組合2000年10月調査結果

 

1)人工呼吸器本体の故障

吸気弁、呼気弁の故障(図2)、内部の基盤の故障などがある。

 

図2呼気弁のトラブル

呼気弁のトラブル

 

呼気弁に付着した結露を取るために叩いたら、呼気弁がずれて換気停止した

 

2)供給される医療ガスの供給ガス圧低下

人工呼吸器は、酸素と圧縮空気を使用して作動する。これらのガスが供給されなくなると、人工呼吸器は換気ができなくなる。

 

ガス圧低下は、マニホールドシステム(供給装置故障時に作動する切り替えシステム)の故障、ボンベが空になったとき、フィルターの目詰まりによって生じる。

 

3)電源異常

コンセントの差し忘れ、停電などによって起こる。最近の人工呼吸器はバッテリーを搭載しているため、停電が発生してもすぐに作動は停止せずに、エラーメッセージを表示するようになっている(図3)。

 

図3バッテリー動作表示

バッテリー動作表示

 

人工呼吸器がバッテリーで作動しているときは、メッセージが出るので確認すること

 

2回路のトラブル

人工呼吸器の回路トラブルは、回路からのリーク(漏れ)、回路の外れ、回路の屈曲などがある。

 

1)回路からのリーク

ウォータートラップや加温加湿器などの接続のゆるみによって起こりやすい。最も多いのは、ウォータートラップの装着不良である(図4

 

図4ウォータートラップ

ウォータートラップ

 

ウォータートラップに貯留した水を捨てた後に、装着不良でリークが発生することが多い

 

2)回路の屈曲

患者を体位変換したときなどに起こりやすい。

 

3患者側のトラブル

患者側のトラブルには、人工気道(気管チューブ、気管切開チューブ)のトラブルがあり、人工気道の閉塞や人工気道のカフの破損、カフ漏れなどがある。

 

トラブル発生時の対応

人工呼吸器のトラブルが発生したら、何が原因かを追究して、改善できなければ手動式蘇生器で換気を行う。

 

図5人工呼吸器のトラブル対応

人工呼吸器のトラブル対応

 

人工呼吸器のトラブルに備えて、人工呼吸器には緊急対応セット(図6)を常備しておくとよい。

 

図6緊急用具一式

緊急用具一式

 

バッグバルブマスク、リザーバーバック、ジャクソンリース、酸素配管分岐器、酸素流量計、懐中電灯、マスク(大、中、小)、カフ圧計、テスト肺など

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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