手術当日、緩下剤で排便があっても浣腸は必要?
『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「術前の浣腸」に関するQ&Aです。
日月亜紀子
大阪市立総合医療センター消化器外科医長
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長
手術当日、緩下剤で排便があっても浣腸は必要?
一般的には不要ですが、術式によっては必要な場合があります。
なぜ術前に浣腸するの?
術前の浣腸は、直腸内に残っていた便が体外に出ることによる術野の汚染防止と、術後感染防止のために行われます。また、術式によっては、直腸内の便貯留は術中の手術操作の妨げとなるので、直腸内を空にするために行います。
全身麻酔で手術を行うときには、筋弛緩薬を用います。その際に、肛門括約筋も弛緩するために、直腸内に貯留している便が排泄されてしまいます。
ただし、乳腺外科、整形外科、心臓血管外科、呼吸器外科分野などでは、浣腸を行わなかったり、他の方法を用いたりすることもあります。浣腸を施行した場合と術後の合併症について有意差がないとの検討(1),(2)もされ、術前処置としての浣腸を中止する試みもされています。
浣腸実施時の体位は、両膝屈曲の左側臥位とします(図1)(3)。浣腸器を挿入する前に直腸診察を行い、直腸の走行を確認しましょう。直腸内に腫瘍がある場合などは、主治医に施行可能か確認します。
- 直腸結腸の走行から、浣腸の体位は左側臥位が 最も適切である。
- カテーテルに潤滑剤を塗布して肛門にゆっくり挿入する。カテーテルの先端が肛門管を越えたら仙骨方向に向け、5~6cm 挿入するが、抵抗を感じたら無理に進めず少し戻す。
- 浣腸液の注入は抵抗や疼痛のないことを確認し、ゆっくり注入する。
- 特に立位では肛門括約筋が緊張し、挿入しにくい。
- 腹圧がかかることで直腸前壁の角度が鋭角になり、カテーテルの先端が直腸前壁に当たりやすく、穿孔する危険がある。
[文献]
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社