輸液管理中の患者さんの車いすでの移送、なんかおかしい?!

 

当連載では、毎回、臨床現場でよく見る光景の写真を1枚提示します。
その写真を見て、どのような危険があるか(考えられるか)を考え、そしてその危険をなくすためにどうしたらいいか、自分なりに考え、解説と照らし合わせてみましょう。
この連載を通して、ぜひあなたの「危険感受性」を磨いてください。

 

細川京子
(川﨑医療福祉大学医療福祉学部保健看護学科講師

 

熊田恵介
(岐阜大学医学部附属病院医療安全管理室副室長

 

 

 

問題

 

 

 

輸液管理中の患者さんを車いすで検査に移送しています

血液疾患にて入院し、輸液管理中の20歳代の女性です。
入院後、末梢静脈を確保し、輸液ポンプを使用して輸液管理を実施しています。
検査に呼ばれたため、車いすで移送しているところです。

 

上の写真から、「あぶない」と思う所を3カ所とその理由について考えてみましょう。

 

 

 

 

 

答え・解説

 

 

 

 

①輸液ポンプの電源コードがない

輸液ポンプを使用する場合、検査時間も考慮してAC電源コードを持参した方が安心です。
移動時間だけだからと準備していないのかもしれませんが、検査室に到着後、予定時間に検査が開始されず、患者さんだけ受付で順番を待つ事態も予想されます。また、電圧低下からアラームが鳴ったりしたら患者さんは不安になります。
輸液ポンプに限らず、移動時に医療機器本体を持参する場合は、本体コードも持参する方が安心です。

 

 

 

②移動式輸液スタンドに足を置いている

車いすで患者さんを移動する際、通常、患者さんの足はフットレスト上にありますが、この写真では移動式の輸液スタンドの上にあります。

 

さらに、よく見ると右手は移動式輸液スタンドを、左手は書類を持っており、両足は体から遠い方のキャスター上にあるという、不安定な姿勢をとっています。
この状態では、輸液ルートが車いすの車輪に巻き込まれる可能性も考えられます。可能であれば、車いすに輸液スタンドを固定し、書類搬送専用バックを付けるなどの工夫も必要です。

 

 

 

③ソックスとシューズを着用していない

患者さんは素足にスリッパを履いていますが、転倒防止の点から患者さんには踵の覆われているシューズを履くように勧めましょう。
また、活動時には靴下を着用し、皮膚の保護にも注意しましょう。

 

 

 

ここにも注目!

次の輸液も準備する

上にも書きましたが、予定時間に検査が開始されないことや、検査時間も考え、次の輸液を準備し、検査室の看護師に輸液の交換と輸液ポンプの操作について十分に申し送りをしておくと安心です。
その際、患者さんにもその旨を一言伝えておきましょう。

 

 

 

車いす移動時に気を付けておくこと

タイヤに空気が入っているか? ブレーキは作動するか?

車いすを使用する前には、タイヤに空気がしっかり入っているか、またブレーキがしっかり作動するかを確認しましょう。
病棟では多くの人が利用するため、車いすは定期的に点検することが必要です。

 

空気が十分に入っていない場合は、移動に伴う振動が強くなり、座り心地も悪く、気分不快のある患者さんは、嘔吐が誘発されたり、骨折患者さんなどでは痛みが増強したりするなど、患者さんの症状が悪化する可能性もあります。
また、ブレーキが不十分な場合は、移動の際に患者さんの体重移動に伴って車いすが動き、患者さんが転倒する危険性があります。

 

 

 

リクライニングタイプの車いすは重心に注意!

リクライニングタイプの車いすを使用する患者さんは、座位が困難であったり、全身状態の観察がより必要な患者さんである場合があります。
そういった患者さんの場合、頭側を倒した状態で移送すると、頭側に重心がかかりやすく不安定になりやすいので、転倒などに注意が必要です。

 

 

 

車いすの移動時には穴や溝に注意!

車いすの前輪が穴や溝にはまると、患者さんが前のめりになり、転倒の危険性があるため注意が必要です。
病院内では特にエレベーターの乗降時に注意しましょう。

 

 

 


『なんかおかしい!? がわかる 看護師の危険予知トレーニング』の【総目次】を見る

 

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