人工呼吸器にて呼吸管理中の患者さんのベッドサイド、なんかおかしい?!
当連載では、毎回、臨床現場でよく見る光景の写真を1枚提示します。
その写真を見て、どのような危険があるか(考えられるか)を考え、そしてその危険をなくすためにどうしたらいいか、自分なりに考え、解説と照らし合わせてみましょう。
この連載を通して、ぜひあなたの「危険感受性」を磨いてください。
細川京子
(川﨑医療福祉大学医療福祉学部保健看護学科講師)
熊田恵介
(岐阜大学医学部附属病院医療安全管理室副室長)
問題
人工呼吸器にて呼吸管理中の患者さんのベッドサイドです
肺炎による呼吸不全にて人工呼吸器による管理中の80歳代の男性です。呼吸状態は改善傾向にあります。
あなたは観察のためにベッドサイドに来ました。
上の写真から、「あぶない」と思うカ所とその理由について考えてみましょう。
答え・解説
①挿管チューブの固定が緩んでいる
患者さんが経口挿管管理下にある場合、口腔内の唾液が多くなることから、気管チューブを固定しているテープ自体が緩んだり、患者さんが舌でチューブやバイトブロックを押し出すこともあります。
そのため、一日に一回は、気管チューブの固定を直しましょう。
また、口腔内のケアの際には、バイトブロックや気管チューブによる口腔粘膜の損傷がないか、開口が可能かなど、舌の状態の観察だけでなく、チューブの固定状況を観察し、緩みが生じていないかを細かく観察しましょう。
②人工呼吸器の蛇管がアームハンガーから外れている
人工呼吸器管理中には、蛇管の位置も重要です。
この場面をよく観察すると、蛇管の片方が蛇管保持アームハンガーから外れています。一方は固定されていても、もう一方が外れていれば、蛇管自体の重みで気管チューブが引っ張られ、気管チューブが抜去する危険性があります。
また、次の③で解説しますが、蛇管は患者さんの手が届く位置にあってはいけません。
体の上にあった蛇管を除こうとして、患者さんが体の位置をずらしながらチューブをつかんでいたというケースもあり、大変危険です。
③拘束帯が緩んでいる
患者さんの身体を拘束することは、われわれ医療者にとっても心苦しいものです。
しかし、ある程度の拘束帯のゆとりは大切ですが、緩んでいると拘束自体意味がありません。
この場面では左手が口元まで直接届くことはないかもしれませんが、患者さんが動いて蛇管をつかむ可能性があります。蛇管が引っ張られ、その先にある気管チューブにも影響を及ぼし、その結果、気管チューブが抜去してしまうという危険性があります。
身体拘束開始時だけでなく、開始後にも繰り返し適宜アセスメントを行い、拘束の必要性や状況の観察を行いましょう。
ここにも注目!
拘束具により皮膚損傷が起こる?!
身体拘束中は、拘束具自体の摩擦による皮膚損傷にも注意が必要です。
特に、輸液の挿入部位に近いところを拘束している場合、輸液挿入部の観察が不十分になりがちです。
正しい滴下が行えているか、固定のテープに緩みはないか、テープがはがれていないかなど、輸液管理につながる項目も観察しましょう。
同意書はきちんと取れているか?
身体拘束の同意は患者さん自身から得ることが不可能なことが多いため、家族等にその必要性を十分説明の上、同意書をとった上で始めなければなりません。今一度、同意書等の確認を行いましょう。
せん妄のアセスメントも重要
適切な鎮静・鎮痛がなされているかなど、せん妄のアセスメントも重要です。
人工呼吸器管理中の患者の多くは、鎮静・鎮痛剤を使用されていることが多く、急激にせん妄症状が現れる場合も多いといわれます。
そのため、1日1回はせん妄のツール等を利用して正しくアセスメントしましょう。
ベッド柵が思わぬ事故のもとに?!
患者さんがベッド柵に手足をぶつけ、けがをするなど、思わぬ事故につながる可能性もあります。
ベッド柵をクッションやタオルなどで覆うなどの工夫をすることも考えましょう。
たまには身体拘束を外してストレッチを
身体拘束を行っている患者さんには関節可動域の制限が生じます。
全身清拭のときだけでなく、体位変換の際などにも身体拘束を外し、ストレッチするなどのケアも大切です。
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