筋肉疲労はなぜ起きるの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は「筋疲労」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
筋疲労はなぜ起きるの?
筋が収縮するときには、グルコースと酸素が必要になります。エネルギーをつくり出すアデノシン三リン酸(ATP)を合成するために、この2つの物質が欠かせないからです。
筋が収縮するときには、アクチンがミオシンと結合して動きますが(「骨格筋はどのようにして収縮するの?」参照)、このときにATPを必要とします。このATPが不足するのが疲労の大きな原因です。
運動中にグルコースが不足すると、バックアップ機構が働くため、肝臓に蓄えられていたグリコーゲンがグルコースになり、これを補給します。しかし、この反応を行うときに酸素が不足していると、グリコーゲンはグルコースではなく乳酸に分解されてしまいます。せっかく蓄えておいたエネルギーの素が無駄になってしまうのです。それどころか、乳酸は筋を疲労させます。
このように糖質の供給、グリコーゲンの蓄積、グリコーゲン分解酵素、酸素の供給などのどこかに障害があると、乳酸などの筋疲労物質が生じます。
そして筋疲労物質が排出されずに蓄積することで、凝りや張り、痛みなどが生じます。
※編集部注※
当記事は、2018年4月16日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック 第2版』 (監修)山田幸宏/2023年8月刊行/ サイオ出版