肺活量測定が呼吸機能測定に欠かせないのはなぜ?|呼吸器に関するQ&A(3)
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は「呼吸」に関するQ&Aの3回目です。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
[前回]
〈目次〉
肺活量測定が呼吸機能測定に欠かせないのはなぜ??
肺活量は安静時の呼吸状態でさらに最大限に息を吸い込み(予備吸気量)、力いっぱい努力して吐ききる空気量(予備呼気量)のことです(図1)。
図1肺の換気容量(かんきようりょう、スパイログラム)
すなわち、肺活量とは、呼吸時に移動できる最大空気量であり、1回換気量(1回の呼吸で肺に取り入れられる空気量)と吸気予備量(最大限に息を吸い込んだとき、正常吸入量以外の空気量)と呼気予備量の総量です。
肺活量が少なくなると、運動などで分時換気量を多くする必要があるとき、正常な肺活量の人よりも呼吸回数を増やす必要があります。それに、呼吸回数を増やしても、必要とされる酸素をガス交換することができません。
呼吸機能を計測するときに肺活量を用いると、肺の拡張障害の有無がこれによってわかるからです。
性別や年齢に応じた予測肺活量に対する実測肺活量の割合(%VC)が80%を下回る場合、肺に拘束性障害(こうそくせいしょうがい)があると推定されます。最初の1秒間の努力呼気量を1秒量(FEV1)といい、予測1秒量に対する割合(%1秒量)により肺年齢が算定されます(図2)。
図2肺機能障害の分類
MEMO肺活量の基準値
成人男性:3,000〜4,000mL
成人女性:2,000〜3,000mL
MEMO拘束性障害(こうそくせいしょうがい)
肺胞の壁の線維化、胸膜の肥厚、胸壁の異常などにより、肺が硬くなった状態で、%1秒量が 80%未満になります。肺が膨らみにくくなり、肺に取り込むことができる空気量が減ってしまいます。
閉塞性肺疾患になると1秒率が低下するのはなぜ?
1秒率は最大限に空気を吸ってから思いきり強く、急速に空気を吐き出し、肺気量変化を経時的に記録して算出します。最初の1秒間に吐き出された空気量(1秒量)を努力性肺活量で割った値を1秒率(FEV1%)といいます。
正常では、最初の1秒間に70%以上の空気を吐き出していますが、閉塞性肺疾患になると1秒率が70%未満に低下し、息を吐きづらくなります。これは、一気に吐き出そうとすると気道内が陰圧になり、肺胞の細気管支が塞がって空気が出にくくなるためです。
MEMO閉塞性肺疾患(へいそくせいはいしっかん)
気道が狭窄し、肺が過度に膨張する病態を示す疾患の総称で1秒率が 70%未満になります。COPD(慢性閉塞性肺疾患)気管支喘息、慢性気管支炎、肺気腫、びまん性汎細気管支炎などがあります。
※編集部注※
当記事は、2016年4月18日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版